AIがサーモンを管理する世界が訪れる!将来は……?
Tidalが開発したAI養殖技術には、どのような仕組みが使われているのでしょうか。

海中には高精細カメラとセンサーが設置されており、サーモンの群れを24時間体制で撮影・スキャンしています。
AIはそこから得た膨大なデータをもとに、サーモンの動きや体の色、泳ぎ方などから健康状態を推測します。
このとき活用されているのが、コンピュータービジョンとディープラーニング(深層学習)という技術です。
これまでに世界中の700以上の養殖場にシステムを設置し、300億以上のデータを収集。5000万匹以上の成長サイクルを監視してきました。

こうした膨大なデータにからAIはトレーニングされ、、「このサーモンは元気がない」「この個体は寄生虫の疑いがある」といった判断を下すことができます。
個体ごとの模様やサイズ、泳ぎ方の特徴から、AIが個体識別を可能にしているのも驚くべき点です。
何千匹といる中から、特定の1匹を識別し、追跡することもできるのです。
そしてどれだけ餌が必要か、無駄になっているかも把握でき、自動給餌ツールと組み合わせることで、環境汚染とコスト削減を両立させられます。

また、病気や寄生虫の早期発見が可能となり、治療を最適化。品質を高められます。
さらには、出荷のタイミングを最適化することで出荷量の向上にもつながっています。
このように、サーモンは今やAIの目と判断によって育てられているのです。
「神の視点」とでも呼んでしまいそうなこの管理能力は、もはや人間の力を超えているかもしれません。
AIの力によって、サーモン養殖はますます発展していくことでしょう。
しかしふと、こんな疑問が湧くかもしれません。
「もしAIが他の動物の管理にも応用されたらどうなるだろうか」
家畜も、野生動物も、AIに管理してもらうなら、より効率的で安全かもしれません。

では、その次は何ですか?
SF映画のように、私たち人間がAIに管理される可能性もあるでしょうか。
朝目覚めると、AIが睡眠の質を判定し、食べるメニューを提案し、仕事の生産性を監視し、心拍数からストレスを読み取って適切な休息を指示してくれる未来があるかもしれません。
それはとても便利で、安心で、健康的で、効率的な生活であり、同時に悲しい世界でもあります。
そして既に、海の中では、そんなサーモンたちのディストピアが始まっているのです。
それで人類が飢えることなく争うことなく平穏に種としての寿命を全うできるならそれは結構なことだと思いますがね。
少なくとも今よりはいいでしょう。
意見の違いで殺し合って文明ごと消し飛ばそうとしている今よりはずっと。
生き物は生きているから価値があるのであって、生きていなければ価値なんてないんですよ。
生き物にとって大事なのは生きて数を増やすことであって自由でもなければ正義でもないですから。
四角い板と腕時計にモニタリングされながらSNSのオススメ記事に一喜一憂する現在の世界が管理社会ではないと?
AIで健康なサーモンとそうでないものを識別できても、それらを物理的に分離できるわけではないので、餌の量も寄生虫の駆除も生け簀全体で大雑把にやる他なく、AI導入という新規性、進歩性はあっても産業上の利用性は特にありません。養殖のサーモンは野生と異なり、餌を探す必要がなく、また捕食者(PREDATER)から逃れる必要もないので慢性的に運動不足で、不健康になることは避けられません。また狭い生け簀の中に閉じ込められるというストレスも避けることが出来ません。日本にはそれを解決する技術があるのですが、世界には知られていませんね。
水産庁の水産白書によれば、銀鮭のFCR(food conversion rate)は1.5となっています。ビーフは10.0-11.0となっています。畜産物や魚介類という動物性たんぱく質の供給源として、世界で最もFCRが低い(サステナブル)のは議論の余地なくサーモンです。サーモンの養殖業は人類に偉大な貢献をしています。