色の常識を打ち破れ!網膜へのピンポイント刺激が新たな色を生む
色は、網膜にあるL(長波長=赤)、M(中波長=緑)、S(短波長=青)の3種類の錐体細胞の反応の組み合わせで知覚されます。
私たちが見るあらゆる色は、これら複数の錐体細胞が同時に刺激されることで生まれています。
しかし、M錐体“だけ”が刺激される状況は自然界では起きません。
この生物学的な制約が、人間の色覚の限界を形成してきました。

今回の研究では、この限界に挑戦すべく「Oz(オズ)」と呼ばれる新たな技術が開発されました。
この名前は、古典的ファンタジー作品『オズの魔法使い(The Wizard of Oz)』にちなんでおり、見たことのない新しい世界を開く象徴として付けられたものです。
Ozは、可視光レーザーを使って網膜上の錐体細胞を1細胞単位で個別に狙い撃ちするという、これまでにない方法です。
この精密な光刺激により、M錐体だけを選択的に刺激するという、自然界ではありえない条件が人工的に作り出されました。
実験では、あらかじめ分類された1000個以上の錐体細胞に可視光レーザーを照射。
その結果、被験者はこれまでに見たことのない、極めて彩度の高い新しい色を知覚しました。

この色は「olo」と名付けられました。
この名前は、L・M・Sの錐体細胞への刺激の組み合わせを2進数表記で(0・1・0)と表し、M錐体だけが活性化した状態を示すものです。
そしてoloは従来のどんな単色光とも一致せず、白色光を混ぜて“薄めないと”色合わせ(oloの色と他の色を比較したり、調整して一致させたりすること) ができないという特異性を示しました。
これは、oloが人間の自然な色覚の範囲を超えている証拠です。
では、oloはどんな色なのでしょうか。