Tレックスのルーツは「アジア」にあった⁈
研究者たちは、ティラノサウルス類の系統樹(進化のつながり)と化石の発見地点、そして気候データを統合し、Tレックスがどのように進化したのかを明らかにしようとしました。
特に注目されたのは、白亜紀後期(約7200万年前)のベーリング地峡、つまり現在のシベリアとアラスカの間にあった陸橋の存在です。
この陸橋を経由して、アジアの恐竜が北アメリカ大陸に渡ってきたとする仮説は以前から存在していました。
そして今回のデータ分析の結果、Tレックスとタルボサウルス(アジア原産のティラノサウルス類)の共通祖先が、約7200万年前にアジアから北アメリカ(ララミディア大陸)へと移動したというモデルが強く支持されたのです。
そしてその共通祖先は北アメリカの地で新しい環境に適応しながら、あの巨大なTレックスへと進化していったのです。
研究では、Tレックスの祖先は当初はララミディアの南部に定着し、のちに白亜紀末にかけて北部へと分布を拡大していった可能性も示されました。

英エディンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサット氏は、今回の発表を受けて次のように述べています。
「Tレックスはこれまで、典型的な“アメリカ生まれの恐竜”だとされてきました。巨大で大胆かつ獰猛で、白亜紀末期の北アメリカを支配した存在です。
しかし実際には、移民だったのです。アメリカで最も象徴的な恐竜は、アジアからやってきた“移民”だったのです」
本研究から、北米を代表するTレックスが実はアジアにルーツを持っていることが明らかになりました。
彼らの直系の祖先の化石はまだ見つかっていませんが、もし今後、Tレックスとタルボサウルスを掛け合わせたような恐竜の化石がアジアで見つかれば、今回の説は確実なものとなるでしょう。