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シリコン×アルミニウムでプラチナ超えに成功 / Credit:Canva,ナゾロジー編集
science

【レアメタル不要】シリコン×アルミニウムの特殊材料がプラチナ超えの性能を発揮!【スピントロニクス】

2025.05.13 11:30:14 Tuesday

私たちにとって重要な技術には、貴重なレアメタルが使用されている場合があります。

スマートフォンやパソコン、自動車など、現代の便利な生活を支えるエレクトロニクス製品も例外ではありません。

しかし、それらレアメタルは高価で供給が不安定であり、環境負荷や資源枯渇の問題を引き起こしています。

そこでスピントロニクスの分野において、そんなレアメタルへの依存から脱却するための研究が日本の研究チームによって行われました。

慶應義塾大学、福岡大学などの共同研究グループは、シリコンとアルミニウムというありふれた元素を用いて、プラチナを超える性能を持つスピントロニクス材料の開発に成功しました。

研究の詳細は2025年5月9日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

シリコンとアルミニウムでプラチナ超えるスピントロニクス材料を開発-レアメタルに依存しない次世代メモリへの応用に期待- https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2025/5/12/28-166914/
Nanometer-thick Si/Al gradient materials for spin torque generation https://doi.org/10.1126/sciadv.adr9481

電子の性質「スピン」を利用した「スピントロニクス」とは?

スピントロニクスは「Spin(スピン)+Electronics(エレクトロニクス)」から生まれた言葉です。

通常のエレクトロニクスが電子の電荷だけを利用しているのに対し、スピントロニクスは電子の持つもう一つの性質であるスピンも活用します。

スピンとは、電子の持つ「小さな磁石のような性質」のことであり、これを利用することで、より速く、より効率的に情報を処理することが可能です。

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電子のスピンを利用する「スピントロニクス」 / Credit:Canva

スピントロニクスの分野として代表的な例は、1988年の巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見です。

これにより、ハードディスクドライブの磁気読み出しヘッドが開発され、記録密度が飛躍的に増大しました。

このように、スピントロニクスによって実現できる技術には、低消費電力、高速動作、高耐久性といった利点があります。

そして現代でも、人工知能やモノのインターネット化(IoT)の進化に伴い、情報処理の拘束か・大容量化・省電力化が求められており、これにスピントロニクスが役立つと考えられています。

しかし、従来のスピントロニクス材料には大きな課題がありました。

スピントロニクスの中核となるのが、「スピン流(電子の磁気の流れ。電気と違ってエネルギーロスが少ない)」ですが、高効率なスピン流生成のためにプラチナやタングステンといった重金属レアメタルが必要だったことです。

しかし、レアメタルは高価で産出国が限られている上、環境負荷も大きく、今後の持続的なデバイス開発には適さないと考えられてきました。

そこで研究チームは「レアメタルを使わず、なおかつ高性能なスピントロニクス材料を開発する」という野心的な課題に挑みました。

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