光は“右か左”だけじゃない? 無限状態が教科書を燃やす日

手法の構築にあたり研究者たちはまず、水素原子が持つある“上のエネルギー状態”から、より安定な“下のエネルギー状態”へ移る現象に注目しました。
(※水素原子の “2s 励起状態” が“1s 基底状態”へ遷移する現象のことです)
この上の状態は実際にはとても長生きで、一つの光だけ(光子)を放出して崩壊することは通常起こらない、と昔から考えられてきました。
そのため、この状態から崩壊するときはたいてい二つの光が一度に放出され、ゆっくりと寿命を迎えることが知られています(およそ0.12秒ほど)。
ところが研究チームによると、もし光が“連続スピン粒子”という特別な性質を持っているなら、通常なら出せないはずの“一つの光”だけで崩壊する経路が開く可能性があるそうです。
連続スピン粒子とは、光が右回りと左回りだけでなく、いろいろな回転の仕方を無限に持てるかもしれないという考え方です。
しかし多くの場合、この特殊な光はふだんの光と見分けが難しく、もし存在しても滅多に目立った違いを見せないように抑えられるようです。
研究チームによる計算では、もしこの特殊な光がある程度大きな“回転の幅”を持っていると、一つの光だけで崩壊する時間が0.12秒程度になることもあり得るそうです。
とはいえ実際の実験では、一つの光だけで崩壊する様子はまだ見つかっておらず、従来どおり二つの光を出して崩壊することしか確認されていません。
そのため、もし本当に連続スピン粒子があるとしたら、その“回転の幅”はかなり小さい値に制限されるはずだと結論づけられています。
さらに、もっと高精度な観測をすれば、その“幅”をさらに厳しくしぼりこめるため、連続スピン粒子が存在する場合でも、非常に小さな影響しか与えられない可能性が高いと考えられています。
要するに、この上の状態の寿命をより正確に測り、一つの光で崩壊している兆しが少しでも見つかれば、連続スピン粒子の存在を裏づける手がかりになるというわけです。