幸せへの近道は、あなたの中にある
今回の研究で、ベック氏らは「幸福においてどの理論が正しいのか」ではなく、「どの理論が誰に当てはまるのか」という視点に切り替えて解析を行いました。
分析対象は、オーストラリア、ドイツ、スイス、オランダ、イギリスの5か国の代表的な国勢パネルデータから抽出された40,074人。
全体的な生活満足度に加え、「健康」「住居」「収入」「人間関係」「仕事」という5つの領域に関する満足度の変化を、最大33年にわたり追跡しました。
その結果、次のような驚くべき事実が明らかになったのです。
最も多いのは、外的要因に影響を受ける「ボトムアップ型」と内的要因に影響を受ける「トップダウン型」で、共に約半数ずつが当てはまっていました。
一方で、対象者の約4人に1人は、生活領域の満足度と内的な心理状態が互いに影響しあう「双方向型」の傾向を示しました。
ところが残りの人々には、3つのパターンのいずれにも当てはまらず、幸福の感じ方の構造が不明瞭なケースも存在したのです。
これらの結果は、幸福に関する従来の平均的なモデルでは、個人の多様な実態を捉えきれていないことを示唆します。

チームは以上の結果を踏まえた上で、今後は「パーソナライズド・ハピネス(個別化された幸福)」という視点を導入し、全体をひとまとめにしてアプローチするのではなく、一人ひとりに合った幸福の高め方を模索すべきだと提言しています。
私たちはつい「誰でも〇〇すれば幸せになれる」といったシンプルな法則を探したくなります。
しかし今回の研究が示すように、幸福のかたちはやはり人それぞれです。
他人を羨んだり、誰かのやり方を真似するよりも、自分に合った幸福のかたちを見つけることが、真の幸せへのいちばんの近道なのかもしれません。
表題と結論が乖離している