幸福度を高める3つのルートとは?
人類は昔から「幸せの源」について考えてきました。
近年では国連の『世界幸福度報告書(World Happiness Report)』といった取り組みを通じて、世界中で人々の幸福の向上が目指されています。
「幸福の源を理解しなければ、効果的な介入策はつくれません」と、カリフォルニア大学デービス校の心理学助教であり、本研究主任のエモリー・ベック氏は述べています。
そうしてベック氏らは、これまでの研究成果を踏まえて、幸福度の高め方には主に3つのルートがあることを指摘します。
まずひとつめは「ボトムアップ型」です。
これは収入、健康、人間関係、仕事、住居といった外的要因の満足度が積み重なって、全体的な幸福感が高められるという考え方です。
ボトムアップ型に当てはまる人は例えば、いい車、いい家、豪華な食事、高級ファッションなどによってモチベーションが上がったり、あるいは世間的に見て贅沢でなくても、自分の趣味に合ったモノや環境に囲まれることで幸せを感じます。
『世界幸福度報告書』などはこの考え方を採用しており、社会全体の所得水準や環境、福祉の向上を通じて、幸福度を底上げする政策が重視されています。

ふたつめは「トップダウン型」です。
こちらは個人の性格や態度、楽観性やレジリエンス(精神的回復力)など、内面的な資質が幸福感を左右するという考えを指します。
世間には、お金がなく、友達や恋人がいなくても、幸せに生きている人がいます。
傍目から見ると不幸な境遇にも見えそうですが、本人たちはその暮らしに十分満足しているのです。
こうした人たちは、外的な要因ではなく、自分の内的な心のありようによって幸せを感じるのです。
トップダウン型に当てはまる人は、マインドフルネス瞑想や心理療法など、個人の思考や感情へ介入することで幸福感が高めやすくなるとされています。

そして3つ目が、これらの中間に位置する「双方向型(バイディレクショナル型)」です。
これは外的要因と内的要因が複雑に相互作用しながら、総合的な幸福を生み出すという考えであり、これに当てはまる人は、内的要因に働きかけても、外的要因に働きかけても、幸福を高める効果が期待できるとされています。
このように、幸福度の高め方には主にこの3つのルートが指摘されていますが、実際に世の中の人々がどれくらいこの3パターンに分類されるのかは、よく検討されていませんでした。
そこでチームは4万人以上を対象に、大規模調査を行ったのです。