アズキの栽培化が日本で始まったことがゲノム解析で判明
アズキの栽培化が日本で始まったことがゲノム解析で判明 / Credit:Canva
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アズキの栽培化が日本で始まったことがゲノム解析で判明

2025.06.02 17:00:41 Monday

お赤飯やあんこの主役として親しまれている赤い小豆(アズキ)。

実はこの小さな豆には、日本で誕生した歴史が隠されていました。

日本の農業・食品産業技術総合研究機構で行われた最新の大規模ゲノム解析により、アズキは縄文時代の日本で栽培化が始まり、そこで赤く大きな豆へと改良されたあと、中国大陸へと伝わっていったことが明らかになったのです。

従来は他の作物と同様に「中国から伝わった」と考えられていただけに、この発見は私たちの常識を覆す驚きの結果となりました。

研究内容の詳細は2025年05月29日に『Science』にて発表されました。

アズキの栽培化が日本で始まったことをゲノム解析で明らかに https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/ngrc/169242.html
A single domestication origin of adzuki bean in Japan and the evolution of domestication genes https://doi.org/10.1126/science.ads2871

大陸説vs日本説 決着のカギはDNA

大陸説vs日本説 決着のカギはDNA
大陸説vs日本説 決着のカギはDNA / 図は「アズキがどこから来て、どこで栽培化され、どう広がったか」を描いています。まず左側、ヒマラヤ付近から細い矢印が伸び、野生のヤブツルアズキが自然に中国へ、さらに海を越えて日本へと広がった様子が示されています。次に日本列島の中央部で矢印が太く色を変え、ここが“栽培化の出発点”であることを強調します。そこから今度は逆向きの太い矢印が朝鮮半島を経て中国本土へ戻り、縄文人が育てた栽培アズキが大陸へ持ち込まれた流れを示しています。中国側に達した矢印は途中で枝分かれし、現地の野生アズキと交ざり合う線が絡み合うように描かれていて、この交雑が中国南部の栽培アズキを遺伝的にカラフルにした理由だとわかります。最後に、中国各地に置かれた色とりどりの丸が「日本由来の栽培型」と「現地野生型」のDNAがモザイク状に混じった今のアズキ集団を表しており、地図全体が“行って帰って混ざった”という一連の旅路を示しています/Credit:アズキの栽培化が日本で始まったことをゲノム解析で明らかに

アズキは日本の和菓子やお赤飯に欠かせない食材ですが、その起源については長年議論がありました。

お米や麦など多くの作物は弥生時代以降に大陸から日本に伝来したとされており、アズキも同じく中国原産だと考えられていたのです。

一般的に植物の遺伝的多様性(DNAのバリエーション)は起源地で最も高くなる傾向があり、過去のDNA解析では中国南部の栽培アズキの多様性が日本のものより高いことが報告されていました。

このため「アズキ大陸起源説」が有力視されていたのです。

しかし近年、日本国内の縄文時代の遺跡から大量のアズキの種子が出土しました。

特に約6000~4000年前(縄文時代後期)の日本の遺跡から見つかった種子は、同時期の中国や韓国の遺跡から出土したアズキよりもひと回り大きかったのです。

作物は人に栽培される過程で種子が大きくなる傾向があるため、これは「アズキ日本起源説」を支持する発見だとして注目されました。

とはいえ、種子の大きさは環境にも左右されやすく、この証拠だけでは決定打に欠けていました。

アズキが本当に日本で最初に栽培化されたのか、科学的に証明することが求められていたのです。

そこで登場したのがゲノム解析です。

農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)と台湾大学の共同研究グループは、アズキの起源を突き止めるため大規模なDNA分析に挑みました。

研究チームはアジア各地から集めた栽培アズキおよび野生のヤブツルアズキ(アズキの原種)合計693系統もの試料を網羅的に集め、全ゲノム(生物の全遺伝情報)の配列を比較したのです。

これは前例のない詳細な分析で、まさにアズキ版「ルーツ探し」とも言える壮大なプロジェクトでした。

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