人間の「美の基準」を問う研究
動物界では、たいていオスのほうが派手な装飾や鮮やかな体色を持ち、メスに対して自らをアピールします。
孔雀の羽根やライオンのたてがみなどがその例です。
つまり、自然界において「美」はオスに備わるものとされてきたのです。
ところが人間では、このパターンが逆転しているように感じられます。
一般的に「美しい」とされるのは女性であり、男性は「渋さ」や「頼もしさ」など別の軸で評価される傾向があるように思えるのです。
この逆転現象については長年議論されてきましたが、過去の研究の多くは文化的に限定されており、サンプル数も少ないため、包括的な検証は困難でした。

では実際に人間は、多くの生物とは異なり、「女性に美しさ」を感じているのでしょうか。
今回の研究は、この点を明らかにするため、50カ国以上で実施された28の既存研究を統合するメタ分析手法を採用しました。
1万2671人の評価者と1万1191枚の顔画像という膨大なデータセットを用いて、人々の美と性に関する感じ方を分析したのです。
顔写真はすべて、正面を向いた構図で、無表情、メイクや背景などの装飾を排除するという条件で統一されていました。
そして「顔の性別」「評価者の性別」「顔の民族的属性」「評価者の文化圏」などを考慮し、どのような傾向があるか分析しました。
さらに一部のデータセットでは、顔の形状を定量化し、男性または女性的な顔の構造的特徴が魅力評価に与える影響も精査されました。
では、どんな結果になったでしょうか。