画像
大学進学しても根本的な性格は変わらない / Credit:Canva
education

大学進学しても「性格は変わらない」と判明―ただし慎重さは身につく

2025.06.19 20:00:58 Thursday

「うちの子、大学に行ったら性格変わっちゃうんじゃないかしら……」

そんなふうに、親が少しだけ不安を感じるのは無理もありません。

特に自分が大学に行った経験がない場合、子どもが自分とはまったく異なる世界に踏み込むことに、一抹の心配が生まれるのも自然なことです。

しかし、最新の研究によると、その心配は少しだけ杞憂だったようです。

スイスのローザンヌ大学(University of Lausanne)の研究チームが、ドイツの全国調査データを使って明らかにしたのは、そのような第一世代大学生であっても、性格の中核部分はほとんど変化しないという事実でした。

ただし、一部の性格傾向には興味深い変化も見られたようです。

この研究結果は2025年3月31日付で『Social Psychological and Personality Science』誌に掲載されました。

Personality stays mostly the same after moving up in social class, new study suggests https://www.psypost.org/personality-stays-mostly-the-same-after-moving-up-in-social-class-new-study-suggests/
Social Class and Personality: The Effects of Educational Mobility on Personality Trait Change https://doi.org/10.1177/19485506251326333

家族で初めて大学に進学すると性格は変わる?

人の性格は年齢とともに少しずつ変わる傾向があります。

特に10代後半から30代前半にかけては、人生の大きな転機が重なりやすく、責任感や感情の安定性が高まるといった変化が多く見られます。

こうした性格変化の原因は、「社会的な役割の変化」だと考えられています。

就職や結婚、親になること、そして大学進学などが、新しい環境に適応するための行動や思考のパターンを促すからです。

今回注目されたのは、教育による社会階級の移動(教育的上昇移動)が性格に与える影響でした。

画像
第一世代大学生は環境の変化に伴い性格が変わってしまうのか / Credit:Canva

研究では、「第一世代大学生」—つまり親が大学に行っていない中で、子どもが大学進学を果たす人々に焦点を当てました。

このような若者たちは、家庭の文化資本とは異なる、より高い教育階級の文化に適応することを求められます。

研究者たちは、第一世代大学生が新たな社会階層に適応する過程で、性格特性にも変化が生じるのではないかと仮説を立てていました

その点を調べるために、研究者たちは、ドイツの全国代表調査「SOEP(Socio-Economic Panel)」のデータを用い、約4,776人の若者を10年以上にわたって追跡。

対象は17歳から30代に至るまでで、大学進学の有無によって2つのグループ「第一世代大学生グループ」と「進学しなかった同世代グループ(安定低学歴群)」に分けました。

さらに、出発点での性格傾向や家庭環境を統制するため、高度な統計手法を用いて、比較の公平性を担保しました。

そして研究で分析されたのは、ビッグファイブ性格特性(外向性、協調性、誠実性、情緒安定性、開放性)と、リスク選好の傾向(リスクを好むかどうか)、コントロール感(自分の人生に対する影響感)といった心理指標です。

分析の結果は、研究チームの予想を裏切るものでした。

次ページ大学に行って「変わらなかった性格」と「身につく慎重さ」

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

教育・子どものニュースeducation news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!