大学に行って「変わらなかった性格」と「身につく慎重さ」
研究チームにとって結果は意外なものでした。
まず、両グループで年齢とともに誠実性(責任感)が上昇するという傾向は共通していました。
これは大学進学と関係なく、成人期に入ると責任感が高まる傾向にあることを示しています。
また、大学に行くかどうかで、外向性、協調性、開放性、情緒安定性など、ほとんどの性格特性に大きな差は見られないことも分かりました。
つまり、たとえ家庭とは異なる文化的環境に身を置いても、人間の基本的な性格はあまり変わらないのです。

研究チームは次のように述べています。
「全体的に性格の変化がほとんどないことに驚きました。
もしかしたら性格の変化は、もっと長い期間、もしくはより微妙なメカニズムを経てはじめて生じるのかもしれません」
こうした結果は、第一世代大学生本人やその親を安心させるものかもしれません。
家族で初めて大学に行こうが、その人の性格は変わらないのです。
しかし、ひとつだけ明確な変化がありました。
それは、リスクを取る傾向が徐々に低下していく(つまり慎重になる)というものです。
第一世代大学生たちは、大学に進学しなかった同世代よりも、時間とともに「冒険しなくなる」傾向が強くなったのです。
この慎重さの変化は、大学生活の中で繰り返し求められる「計画性」「自己管理」「長期的視点」の影響かもしれません。
また、第一世代大学生が「異文化環境」である大学で過ごすことで、より用心深くなった可能性も指摘されています。
興味深いことに、追加の分析によって、この傾向は親も大学に行っていた人たちにも見られることも分かりました。
つまり、大学という環境自体が、人をリスク回避的に育てる効果を持っているのかもしれません。
ただし、本研究には限界もあります。
分析対象はドイツ国内の学生であり、大学の種類や学部ごとの文化的差異は分析上区別されておらず、全体としての効果にとどまっています。
それでも、この研究は私たちに1つの理解を与えてくれます。
人の本質は、たとえ環境が変わっても、そう簡単には変わらないのです。