生命と非生命の境界線をまたぐ謎の古細菌を発見
生命と非生命の境界線をまたぐ謎の古細菌を発見 / .この渦鞭毛藻プランクトンの中には、細胞というよりウイルスのように働く微小な微生物が生息していることがわかりました/Credit: Takuro Nakayama/University of Tsukuba
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生命と非生命の境界線をまたぐ謎の古細菌を発見 (3/3)

2025.07.07 21:00:04 Monday

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「生命の境界線」再考——スクナ古細菌が教えること

「生命の境界線」再考——スクナ古細菌が教えること
「生命の境界線」再考——スクナ古細菌が教えること / Credit:Canva

今回の研究によって、生物とウイルスの境界線が、実は明確な一本の線ではなく、非常に曖昧であることが示されました。

これまで私たちは、生物は細胞を持ち、自力で栄養を作り出し、自己複製できる存在だと考えてきました。

逆に、ウイルスは細胞を持たず、自分では栄養もエネルギーも作れず、宿主の細胞に入り込んで乗っ取らなければ増殖できないため、「生物ではない」と考えられてきました。

ところが今回見つかったスクナアルカエウム・ミラビレは、細胞という生物らしい特徴を保ちながら、栄養を作り出す能力をほぼ完全に失い、宿主に完全に依存するという、まるでウイルスのような生活をしているのです。

これは生命の定義を考える上で非常に大きな発見です。

研究者たちは、この微生物がどうしてこんなにも不思議な性質を持つようになったのか、その進化の謎にも注目しています。

一つの可能性として考えられているのは、もともと自力で栄養を作れる普通の生物だった祖先が、長い進化の歴史の中で宿主との関係に適応していった結果、どんどん余計な遺伝子を失い、最終的に自力では何もできない極端にシンプルな生物へと変わったという説です。

こうした進化は、生物が他の生物と共に暮らす中で起きる、いわば「進化のコストカット」です。

必要なものだけを残し、余分なものを捨て去って効率化を極めていった結果、ウイルスのように宿主に全面的に頼る存在になってしまった可能性があります。

一方で、逆の視点から見ると、スクナアルカエウムのような微生物は、原始的な生命の姿を再現している可能性もあります。

地球上で生命が誕生した初期の頃、生き物は非常に単純な構造で、ウイルスに近いような性質を持っていたかもしれない、という仮説もあるのです。

もしこれが正しければ、スクナアルカエウムはまるでタイムカプセルのように、太古の生命の姿を私たちに見せているのかもしれません。

また、スクナアルカエウムの発見は、生命の進化の可能性がいかに多様であるかも示しています。

生命は単純なものから複雑なものへと一直線に進化するだけでなく、逆に単純化する方向へも進化します。

さらに、生命同士が融合したり、分離したりといった複雑な変化も知られています。

例えば私たちの体の中にあるミトコンドリアという細胞内器官は、もともと独立した細菌が別の生物に取り込まれて細胞の一部となったものです。

同じように海のプランクトンの中にも、シアノバクテリアが取り込まれて新しい細胞内器官に進化した例があります。

こうした生命同士の融合や共生は、進化の歴史の中で何度も起こってきました。

スクナアルカエウムも、今は宿主に寄生しているだけですが、将来的に宿主に何らかのメリットを与える共生関係へと進化する可能性もあります。

今回の発見が特に科学者たちの注目を集めるのは、スクナアルカエウムがこれまでの生物の分類体系にまったく当てはまらない、新しい系統に属していることが分かったからです。

研究チームはこの新たなグループを「スクナクレード(Sukuna-clade)」と名付け、これは新しい門やそれ以上の大きな分類になる可能性があると指摘しています。

このことは、地球上にはまだ私たちがまったく知らない未知の生命が多数存在し、私たちがこれまで考えていた「生命の枠組み」を根本から書き換えるような可能性を秘めていることを意味します。

スクナアルカエウムは「生命の最小限界」を示す存在として、生命科学の根本的な問いをもう一度考え直すきっかけを与えてくれました。

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生命と非生命の境界線をまたぐ謎の古細菌を発見 (3/3)のコメント

自宅警備隊

―有用物質を作る能力がほとんど見当たらず、宿主への貢献はない―

―最終的に自力では何もできない極端にシンプルな生物へと変わった―

うん、なんかこういう人いるよね🤣

    ゲスト

    たしかに。彼らは本当に生物なのだろうか。

    Morley

    コミュニティにとっての悪性新生物にならないなら、彼らはまだマシかもしれません

たいむ

これが進むとミトコンドリアや葉緑素になるわけだ。

    ゲスト

    それらは互恵的共生関係なのでは?

まゆ

生命とは?とても注目していきたい!

ゲスト

います、います。日本のサラリーマンのことですよね。
決して起業独立せず、その会社に特化したシンプルな生物に変化していく。

    ゲスト

    サラリーマンは労働力という対価を払ってるから…
    スクナなんとかに近いのは生活保護受給者とかでしょ
    それがもっと悪性化すると政治家みたいな悪性新生物になる

紫波光太郎

生命とは、自己組織化しながら、内外の情報とエネルギーを“光(バイオフォトン)”としてやり取りする“場”である。

逆に「死」とは、バイオフォトンの放射が減少し、細胞間の光の同期が失われた状態と見ることができる。つまり、光の“共鳴場”が崩れ、秩序が失われたとき、生命は終焉を迎える。

◆ 結論
生命とは、バイオフォトンという“光の言語”で、宇宙と響き合い、自己を維持し、変化し続けるエネルギーのプロセスである。

なお

スクナクレードに近い古細菌からウィルスへ進化したとは考えられないだろうか。
本文中にあるようにコストカットの進化の方向性をとったということはないのだろうか。ウィルスにもDNAを使うものもいるし。素人考えだが。

ゲスト

人間が勝手に決めた定義に当てはまらないだけで、本当はウイルスも生物なんだろうな

ゲスト

なにがしかに寄生しなければならないのなら、コストカットの進化の上で系統樹的には新しい部類になりそうなんだけど、DNA解析的にはどうなんだろう⁉️

ハイレム

微生物の段階から共生して増殖し進化してきて人や動物ができたの?
細胞の中に微生物が…
脳神経も細胞でその中に微生物がいる?
微生物からどんな奇跡が起きたら人間の様な細胞の塊になるんだろ

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