自己開示においてバーチャルはリアルを超えるのか
今回の研究者は、「VRChat」というソーシャルVRサービスにアクセスしたときの感想を次のように語っています。
「社交辞令的・表面的な会話が少ない様子や、大人の男性同士が美少女のアバターで仲睦まじく抱っこごっこをする様子を見て、その自由で率直なコミュニケーションに驚きました」
そして「リアルな世界では、この人たちはまずこんなやりとりをしないだろう」とも考えました。

このような観察をきっかけに、研究チームは「自己開示」がリアルとオンラインでどう変わるのかを科学的に検証することにしました。
自己開示とは、個人の感情や考え、経験などを他者に伝える行為であり、人間関係を築くうえで重要な要素です。
たとえば「最近仕事で悩んでいて…」と打ち明けるような行為も、自己開示の一例と言えるでしょう。
過去の研究では、テキストや音声でのコミュニケーションでは、対面よりも自己開示が促進されることが示されてきました。
しかし、ZoomやTeamsといったビデオ通話や、アバターを使ったVRなど、より進化したコミュニケーション手段では、実際にどれほど心を開けるのかは分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、以下の4つのコミュニケーションメディアを用いて、144人(72ペア)の参加者に対話してもらう実験が行われました。
- 対面でのリアル対話
- ビデオ通話
- 本人に似せたリアルアバターによるVR対話
- 本人に似ていないトゥーン調の非リアルアバターによるVR対話
参加者には、「記憶から消したい出来事」などの個人的な話題について、ペアで順番に語り合ってもらいました。
研究では、発話の内容を「情報」「思考」「感情」の3つに分類し、発言の深さをスコア化。
さらにアンケートにより主観的な自己開示の程度も測定しました。
このように、言語行動(客観データ)と主観的認識(アンケートによる主観データ)の両面から、自己開示の程度を詳細に測定しました。