太陽風の「2つのタイプ」を観測
今回の接近飛行で明らかになったのは「太陽風が単なる恒常的な流れではない」という事実です。
これまでの観測では、太陽風は地球近くでは比較的安定しているように見えましたが、太陽に近づくほどにその様相は混沌としていました。
太陽風には2つのタイプがあり、ひとつは秒速約400kmの「高速風」。
もうひとつはその約半分の速度で流れる「低速風」です。
これまで、低速風の起源は曖昧で、どこから発生しているのか特定されていませんでした。

しかしプローブの観測により、低速風には磁場の変動パターンが異なる2種類があることが確認されました。
ひとつは「アルヴェン型」と呼ばれる、小さなスイッチバック(磁場がジグザグに折れ曲がった変化)を含むタイプで、もうひとつは磁場の変動の少ない「非アルヴェン型」です。
とりわけ興味深いのは、この低速の太陽風が高速のものよりも2倍ほど密度が高く、地球への影響も時に「コロナ質量放出(CME)」並みに強くなることがあったことでした。
つまり、これまで見落とされてきた「静かな太陽風」が、実は私たちの生活に深く影響しているかもしれないのです。
科学者たちは、探査機が今後さらに太陽に接近していくことで、この低速風の正体や進化の仕組みを解明できると期待しています。
次回の近日点通過は2025年9月。さらに太陽の奥深くへの旅が続きます。
イカロスのように燃え尽きずに過ごせますように。