グラフェンが開いた「スピン流革命」

今回の研究によって、「巨大な磁石を使わず、グラフェンという極めて薄い材料の上で安定したスピン情報の流れを作ることが可能である」という画期的な可能性が示されました。
これは単に「磁石なし」でスピンを操れるという便利さだけではありません。
電子機器が抱えてきた発熱やエネルギーロスといった大きな問題を根本から変えてしまうほどの重要な発見なのです。
なぜそんなに重要なのか──それは、現代の電子機器が「熱」との戦いを続けているからです。
スマートフォンやパソコン、さらには巨大なデータセンターまで、電子が動くことで常に熱が生まれ、その熱を逃がすために膨大なエネルギーを使っています。
今回の研究が示したスピン流を使えば、電子そのものを動かさずに情報を伝えることができるため、熱として無駄に失われてしまうエネルギーを大幅に削減できる可能性があります。
その結果、スマホやノートPCは今よりもっと長時間使え、データセンターの電力消費も劇的に下がるかもしれません。
そして何より、現在の電子機器では実現できないほどの省エネルギー性能を持つデバイスが誕生することになるでしょう。
さらにスピン流の応用先として、研究者たちが最も注目している分野があります。
それが量子コンピュータです。
現在開発中の量子コンピュータは、電子や原子などの量子状態を情報処理に使っていますが、量子状態はちょっとした熱やノイズですぐに壊れてしまうという弱点があります。
そのため、離れた場所にある量子ビット(キュービット)同士を結びつける「信号線」が最大の課題となっています。
ここで活躍するのが、今回発見された「トポロジカルに保護されたスピン流」です。
このスピン流はトポロジーという数学的な性質のおかげで外部のノイズや乱れに非常に強く、多少の欠陥や障害があっても安定したままスピン情報を遠くまで届けられます。
そのため、このスピン流を使えば量子コンピュータ内部での情報伝達や、将来の分散型量子コンピュータ間の通信が劇的に改善される可能性があるのです。
さらに広い視野で見ると、今回の研究は「二次元材料」という、わずか原子一層から数層分しかない極薄の材料を組み合わせることで、これまで想像もしなかった新たな機能を引き出すという研究分野に大きな刺激を与えました。
今回はグラフェンとCrPS₄という二つの異なる材料を重ねることで、磁石がないのにスピン流を作るという驚くべき現象が生まれましたが、実はこのような「二次元材料のサンドイッチ」を工夫することで、他にもさまざまな量子現象や特異な物性が生まれることが知られています。
つまり今回の成果は、「材料を重ね合わせるだけで驚くような新しい現象を引き起こせる」という、非常に魅力的な可能性を改めて証明したことになります。
これから研究がさらに進めば、これまでSFの中にしかなかったような省エネデバイスや量子情報通信技術が現実になる日も遠くないかもしれません。
そもそも電気信号って電子が移動してる訳じゃなくて、電磁波として伝わっているのではなかったっけ?
だから真空中だと光速で伝わるけど、通常は被膜の比誘電率に応じて遅くなると記憶。(だいぶ昔の記憶)
まあそれでも電子も遅いながらも移動するし熱は無視できないくらい出るのでこういう新技術ができると色んな問題が解決できそうで夢があります。
電流は電子の動きによるものですよ。
物体中の電磁波は主に電子の疎密波として伝わるので、めっちゃ高速で動いてますよー
ミルフィーユだのサンドイッチだのお腹を直撃するワードがこっそり混ざっている恐怖の記事。