結晶の「二つの顔」を特定、アマテラス石の正体
では、結晶構造のどこが特別なのでしょうか。
アマテラス石は、ひとつの「単位胞(たんいほう)」の中に、性質の異なる2種類の構造要素を同時に持っていました。
単位胞とは、結晶をつくる最小の“ひと組のブロック”のことです。
たとえるなら、同じ家(単位胞)の中に間取りの違う二つの部屋が同居しているような状態です。
このような「二面性」を持つ構造は理論的には予測されていましたが、自然界の鉱物で実際に観察されたのは今回が初めてでした。

命名にも、この二面性が深く関わっています。
新鉱物は、日本神話に登場し、日本を象徴する存在である天照大神 にちなんで「アマテラス石」と名付けられました。
天照大神が持つ「荒魂(あらみたま)」と「和魂(にぎみたま)」という二つの側面は、結晶構造の二面性と響き合います。
文化と科学が同じ名前で結びつく——そんな物語性も、この鉱物を特別なものにしています。