未来の音響は“身体がスピーカー”になる

音を出さずに、身体に重低音を響かせる技術があれば、私たちの音楽やエンタメ体験は大きく変わるかもしれません。
たとえば、夜中でもお気に入りのバンドのライブのような迫力を、周りを気にせず楽しめます。
アパートなどの集合住宅でも、近所迷惑を気にせずに映画やゲームを大迫力で体感できます。
この技術は、音の振動を身体で感じ取ることができるため、耳の聞こえにくい人でも、音楽のリズムを「感じて楽しむ」手助けになるかもしれません。
研究チームは、今後このシステムをさらに進化させたいと考えています。
今は低音域だけを刺激していますが、将来的には「複数の音の高さ(周波数)」に対応できるようにして、中音や高音も身体で感じられるようにする予定です。
また、「振動の種類」も増やして、より細かな音のニュアンスを再現できる仕組みを加える計画もあります。
さらに、体の大きさや感度の違い、好みの音楽ジャンルに合わせて、電気刺激の強さやタイミングを自動で調整する「キャリブレーション機能」も視野に入れています。
これが実現すれば、誰でも自分にぴったりの「カスタム重低音」を楽しめるようになるでしょう。
今回の筑波大学の研究成果は、VRライブやゲームだけでなく、日常的な音楽の楽しみ方にも新しい風をもたらすかもしれません。
筋肉で音を感じるというこれまでにないアプローチは、あえて言うならば「人間の体そのものが楽器になる」ような未来の入り口とも言えます。
ライブ会場で感じる胸にズシンと響くあのベース音を、ヘッドフォンと小さなデバイスだけで体験できる日が来れば、エンタメはもっと自由で、もっと静かに、そしてもっと身体的なものへと進化していくことでしょう。
低音以外や曲内のリズム全部をそれで伝送できたりするとライブで演奏する側のモニター用にも使えていいかもしれないですね。