Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部
psychology

「ガチャ課金やスパチャ」気軽にする人と絶対しない人の心理傾向の違い (2/2)

2025.08.16 12:00:47 Saturday

前ページ払う人と払わない人、その心理傾向の違い

<

1

2

>

その差はどこから生まれるのか

無料で楽しめる課金系のコンテンツにお金を払う人と払わない人の差は、単純にその人の財産の余裕から生じているわけではありません。そこにはマテリアリズム傾向が関係していると考えられます。

では、このマテリアリズム傾向というものは、どこから生じるものなのでしょうか?

大きな要因となるのは、自己評価の低さや心理的不安です。

Chaplin & John(2007)の研究では、子どもや若者において自己肯定感が低いとき、物質的所有を幸福の源とみなす傾向が強まることが示されました。さらに自己肯定感を高める介入を行うと、マテリアリズム傾向が低下することも報告されています。

つまり「自分に自信が持てないときほど、外部にアピールできる形の消費に価値を感じやすい」という構図です。

またマテリアリズム傾向との関係で注目されているのが、相対的剝奪感(personal relative deprivation)です。これは「自分が他人より恵まれていない」と感じる主観的な感覚のことで、実際の収入や地位とは必ずしも一致しません

イギリスの研究チーム(Kim, Callan, & Gheorghiu, 2017)は、この感覚とマテリアリズム傾向(materialism)の関係を4つの調査・実験で検証しました。結果は一貫して、相対的剝奪感が強い人ほど「自分の地位や豊かさが外部へ可視化できる消費(ブランド品・高級サービス・派手な消費)」に価値を感じやすいことが示されました。

この研究の中では、参加者に自分より裕福な人物と比較させると、相対的剝奪感が上昇し、それがマテリアリズム傾向の強まりにつながることが確認されました。逆に、自分より貧しい人物と比較した場合、この効果は見られませんでした。つまり、上方比較によって「自分は劣っている」という感覚が芽生えると、人は消費を通じて自己価値を補おうとする傾向が強まるのです。

このような心理は、スパチャやガチャのように結果が可視化され、他者からの承認が得られやすい消費行動と非常に相性が良いと考えられます。承認や達成感がすぐにフィードバックされるため、「ここで行動すれば劣った立場を補える」という感覚が強まりやすいのです。

Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部

これは意思決定のスタイルにも影響を与えます。心理学では、情報を集めて計画的に比較検討するシステマティック思考と、直感や感情に基づいて素早く判断するヒューリスティック思考という2つの傾向があるとされます。

システマティック思考の人は、購入や投資といった行動を「今使うべきか、それとも将来に回すべきか」という長期的視点で判断します。対してヒューリスティック思考の人は、瞬間的な感情や直感を重視し、「今この瞬間が楽しいかどうか」を優先する傾向があります。

このヒューリスティック思考と結びつきやすいのが、FOMO(Fear of Missing Out:機会損失の恐れ)です。

FOMOとは、「この機会を逃したら二度と手に入らないかもしれない」「今参加しないと取り残されてしまう」という感覚で、希少性を強調する演出や期間限定キャンペーンなどが典型的な引き金になります。この心理が働くと、人は冷静な比較検討をする前に「今行動しなければ」という衝動が強まり、瞬間的な支出を決断しやすくなります

こうして見るとマテリアリズム傾向が高い人やヒューリスティック思考を持つ人には、ネガティブな印象を受けてしまいますが、何もこの傾向が悪いというわけでもありません。

マテリアリズム傾向が高い人は、長期的に貯蓄を目指す人よりも明確な消費目的を持つため、自身の気分を盛り上げたり仕事のモチベーションを維持しやすく、またヒューリスティック思考は意思決定が速く機会を逃しにくいというポジティブな要素があります。

逆にマテリアリズム傾向が低い人や、システマティック思考の人は、慎重な分、即断即決が求められる場面では意思決定が遅くなり、チャンスや楽しみを逃す可能性があります。また、変化への対応や気分の切り替えが遅れるため、環境の変化が激しい状況に対処しづらいというネガティブな側面もあります。

そのためどちらがいい、悪いということではありません。

日常的な消費行動では、計画性のない出費や依存的な課金行動はリスクがあります。逆に慎重すぎて日々の楽しみを逃し気分が重苦しくなる恐れもあります。こうした心理傾向を理解して、自分の行動を省みるとちょうどいいところで、毎日を楽しめるようになるかもしれません。

<

1

2

>

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

0 / 1000

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!