“興奮剤”なのに心拍が遅くなる?治療によりコカイン中毒のチワワが生還
一般にコカイン中毒というと「心臓がドキドキして速くなる」イメージが強いかもしれません。
ところがこのチワワは、まったく逆の“極端な心拍低下”に陥りました。
なぜこのような現象が起きるのでしょうか?
コカインは脳や心臓の神経伝達物質を増やし、交感神経を刺激して心拍を上げる作用があります。
しかし、「高用量」を一気に摂取すると、今度は心筋のナトリウムチャネルやカリウムチャネルを遮断してしまいます。
電気信号が心臓の中で伝わりにくくなり、“局所麻酔薬”のような作用が前面に出てくるのです。
その結果、心臓のリズムが乱れ、「房室ブロック」や「心拍数の低下」といった本来と逆の症状が現れたのでしょう。
この犬の治療では、まず心臓のリズムを回復させるため「アトロピン」を通常の5倍量投与しました。
それでも十分に改善しなかったため、さらに「エピネフリン(アドレナリン)」を追加。
この連続投与により、ようやく心拍が正常範囲に戻り、チワワは命を取り留めました。
その後、専門病院で24時間経過観察されましたが、幸い後遺症もなく退院できたといいます。
この症例が注目された理由は、「犬のコカイン中毒で房室ブロックが発症した初めての臨床例」として記録されたからです。
これまでの研究や臨床報告では、コカイン中毒の犬は主に「心拍数が高くなる」のが一般的で、 今回のような例は報告されていませんでした。
つまり、高用量やストリートドラッグの混入薬物が、動物の心臓に“予想外の異常”をもたらすことがあるという新しい警鐘なのです。
本研究を率いたジョンソン獣医師は「このような症例報告が現場の医師や飼い主の知識となり、命を救う助けになる」と語っています。
飼い主へのアドバイスとして、獣医師は「散歩や外出時は“何でも食べてしまう”癖を抑えるためにバスケットマズル(口輪)を活用し、家庭や外での落ちているものには十分に注意してほしい」と呼びかけています。
また、社会全体として「違法薬物の流通が人間だけでなくペットにも脅威となっている」現実を直視しなければなりません。
このチワワは奇跡的に助かりましたが、これは“まれな幸運”です。
多くの場合は命を落とすリスクが高いのが現実です。
私たちも「ありえないこと」と考えず、愛犬の異常を感じたらすぐに獣医師に相談することが大切です。
高用量服用しても死なずに耐えていた犬がすごいなと。