注意と記憶のはたらきが退屈感を左右する
チームは今回、アメリカ南東部の大学から115人の学生を募集し、最終的に88人を対象に調査を行いました。
そのうち31人は自己報告による診断尺度で高いADHD傾向を示し、57人はそうではありませんでした。
参加者は、現在と過去のADHD症状を問うアンケートや退屈傾向を測定する8項目の尺度に回答。
さらに、注意制御と作業記憶を調べるために6種類のコンピュータ課題を実施しました。
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注意制御は「気を散らす刺激に抵抗できるか」「集中を長時間維持できるか」「矛盾した情報を整理できるか」などを測る課題で評価。例えば、予測不能な時間差で現れる視覚的な合図に素早く反応するテストなどが用いられました。
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作業記憶は「複雑スパン課題」と呼ばれる方法で測定。これは、数字の計算や図形の対称性を判断しながら、その間に示された文字や位置の並びを記憶しておくといった内容です。
分析の結果、ADHD群は対照群に比べ、退屈傾向のスコアが有意に高く、とくに「注意を持続する力」や「妨害を抑える力」が低いほど退屈を感じやすい傾向が示されました。
研究者は「ADHD傾向を持つ若者は、自己報告式の尺度で高いスコアを示し、退屈傾向も顕著に高かった」と説明します。
その差は従来の研究結果を大きく上回っており、ADHDの人が日常的に退屈を感じやすいことを強調しました。
ただし研究には制限もあります。
サンプル数が88人と比較的小さく、自己報告に基づく測定であるため、回答バイアスの影響を受ける可能性があります。
参加者も大学生が中心で、多くが女性だったため、正式なADHD診断を受けた人全般に結果をそのまま当てはめられるかどうかは慎重に検討する必要があります。
それでもこの成果は、退屈感を「単なる気まぐれ」ではなく、注意と記憶のはたらきに関わる心理学的な特徴として捉える重要な一歩となります。
もし退屈しやすさが注意制御や作業記憶の弱さと関係しているなら、これらの能力を鍛える方法や、タスクを小分けにする工夫、達成感を得やすい報酬の導入などが、日常生活や学習・仕事での集中力を高める助けになるかもしれません。