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呼気に含まれる”鉄の匂い”から肝臓の異変を検知する / Credit:Canva
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肝臓が悪いと「呼気から鉄の匂い」が漏れ出ると判明

2025.09.24 11:30:34 Wednesday

ほとんどの人は意識していませんが、私たちの吐息には実に1000種類以上の分子が含まれています。

これらの分子「揮発性有機化合物(VOCs)」は、体内の代謝や健康状態を密かに反映している“体からのサイン”です。

京都大学大学院医学研究科の研究グループは、 肝臓がダメージを受けると“鉄の匂い”のもとになる分子が呼気に増えることを、マウス・ヒト患者で明らかにしました。

この画期的な成果は、2025年9月2日付の『Redox Biology』に掲載されています。

息から病気を検知する―鉄の匂いが教える肝臓の異変― https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-09-22
Monitoring ferroptosis in vivo: Iron-driven volatile oxidized lipids as breath biomarkers https://doi.org/10.1016/j.redox.2025.103858

肝臓の異変を調べる新手法。秘密は「呼気」にあり!?

私たちの体では、細胞が壊れる「脂質の酸化」が起きることがあります。

特に鉄(Fe)の作用で細胞膜の脂質が激しく酸化されると、「フェロトーシス(ferroptosis)」と呼ばれる特殊な細胞死が生じます。

このフェロトーシスは、肝臓病やがん心臓・腎臓の病気など、多くの病気に関わる重要な現象です。

肝臓は鉄が多く蓄積する臓器のため、フェロトーシスが起きやすいのです。

しかし、こうした細胞の変化を生きた人間の体の中で直接調べるには、肝臓の組織を採取しなければならず、より負担の少ない検査方法が求められてきました。

そこで注目されたのが呼気(息)です。

呼気には体内代謝のヒントとなる揮発性有機化合物(VOCs)がたくさん含まれており、 特に脂質が酸化されると「揮発性酸化脂質(VOLs)」という分子が生じて、最終的に息として体外に出てくることが知られていました。

もしこのVOLsを息から正確に検出できれば、肝臓の異変を非侵襲的にリアルタイムでモニターできるかもしれない

このシンプルな発想が、今回の研究の出発点でした。

そのために研究チームは、「oxidative volatolomics」という最新の質量分析技術を独自で開発。

これを用いて、まず培養細胞でフェロトーシスを進行させ、どんな分子が放出されるかをくわしく調べました。

また、マウスを使った急性肝不全や慢性肝臓病のモデルでも、 肝臓や呼気中の分子を同じように解析しました。

最終的には、健康な人、MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)患者、肝硬変患者の呼気を比較し、人でも同じ現象が起きているかを調べました。

次ページ呼気に現れる「鉄の匂い」から肝臓の異変を知ることに成功

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