「笑わない」人はうつリスク1.5倍に
研究の結果は明快でした。
6年間の追跡期間中、参加者のうち約15%(4805人)が新たにうつ状態に陥りました。
「ほぼ毎日笑う」グループと比べ、「週に1~5回」笑う人のうつリスクは1.25倍、「月に1~3回」では1.26倍、そして「ほとんど笑わない」人は1.49倍も高いという結果になったのです。
つまり「笑う頻度が低いほど、将来うつになるリスクが高くなる」という、明確な“用量反応関係”が確認されました。
この傾向は年齢や性別、経済状況、生活習慣病、社会参加など、さまざまな要因を統計的に調整した後でも揺るぎませんでした。
さらにチームは、笑いが心の健康に与えるメカニズムにも注目しています。
笑いにはストレスホルモンを減少させたり、免疫機能を高めたりする効果があるほか、友人や家族とのコミュニケーションを通じて「社会的つながり」を強め、孤独感や不安を和らげる働きも期待されています。
つまり「よく笑う人」は、日常の小さな楽しみを共有したり、社会とつながる機会が多いことで、うつ病の予防につながっている可能性が高いのです。

「笑い」が心のバリアに
今回の研究は、「よく笑うこと」が単なる気分転換にとどまらず、将来的なうつ予防に実際に役立つことを初めて大規模かつ長期間のデータで証明しました。
特別なユーモアや笑いのセンスは必要ありません。
友人や家族と楽しい話をしたり、ちょっとしたことで声を出して笑う――そんな毎日の小さな習慣こそが、心の健康を守る“バリア”になり得るのです。