若者への寝る前の「スクリーン・おやつ・運動」禁止は意味ある?
多くの人が子どもの頃から聞かされてきた「寝る前のスマホ・おやつ・運動禁止」という“睡眠衛生”のルールには、それぞれもっともらしい理由があります。
たとえば、スマホやタブレット、テレビなどのスクリーンは、ブルーライトによって体内時計を乱し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げるといわれています。
また、運動は体を興奮させて寝つきを悪くし、夜食やカフェインは消化器や脳を活性化させて睡眠を浅くしたり遅らせたりするという考えが一般的です。
こうした考え方にもとづき、世界中の親や教育現場では「寝る前1時間は絶対禁止」という指導が当たり前になっています。
確かに大人でこうした影響を実感する人は少なくないでしょう。
では、これらルールを何度も教えられている10代の若者たちにとってはどうでしょうか。
実のところ、従来の根拠の多くが自己申告アンケートや一日だけの断片的な観察に頼っており、科学的な因果関係や、日々の生活のなかでどれほど守られているのかという実態は、明確には分かっていません。
そこでオタゴ大学の研究チームは、「現代の10代は寝る前に本当にルールを守っているのか」「守らない場合、それが本当に睡眠の悪化につながるのか」を客観的な手法で検証しました。
研究対象となったのは、ニュージーランド在住の11歳から15歳の男女83人です。
彼らの普段の生活の中で、「寝る前1時間」の行動を徹底的に記録し、その直後の睡眠の質や量を正確に計測しました。
具体的には、参加者は4日間、胸にカメラを装着して寝る前の行動を自動で記録し、さらに寝室にもカメラを設置していました。
睡眠自体は、リストバンド型の加速度計で8日間にわたり「寝つきやすさ」「総睡眠時間」「途中で起きた回数」などを測定しています。
また食事内容についても、どんなものを食べたり飲んだりしたか、詳細な調査を行いました。
この研究の大きな特徴は、ある子がスクリーンを使った夜と使わなかった夜など、同じ人の異なる日の行動と睡眠を比較することで、個人差を排除しやすい点にあります。
従来のような集団間比較や自己申告アンケートでは得られなかった、きめ細かな実態が浮かび上がるのです。