ADHDの女性は月経前不快気分障害リスクが3倍だと判明
調査の結果、医師からADHDと診断された女性の31%がPMDDに該当し、診断歴がなくてもADHD傾向が強い女性では41%がPMDDに該当しました。
これに対し、ADHDではない女性でPMDDに当てはまる人は9%ほどでした。
つまり、ADHDの女性は、PMDDの発症リスクが約3~4倍にも上るということが分かったのです。
さらに、「ADHDに加えて、うつ病や不安障害を持つ女性」では、PMDDリスクがさらに高まり、全体で約4.5倍のリスクとなりました。
これは、もともとADHDの女性は「こころの不調」全般を抱えやすいことを裏付ける結果でもあります。
ADHD女性に現れるPMDDの症状には、「イライラしやすい」「気分が落ち込む」「圧倒される感じ」などが特に目立ちました。
また、今回の調査では「不眠」もADHD女性のPMDD症状として特徴的に多く、夜眠れない・途中で目が覚めるなどの訴えがよく見られました。
PMDDとADHDの関係については、女性ホルモン(エストロゲン)の変動に脳が敏感に反応する可能性など、いくつかの仮説が提案されています。
しかし、なぜADHD女性でPMDDが多いのかという“はっきりした理由”はまだ分かっていません。
さらに注目すべきは、「月経前だけが危険」というわけではない点です。
ADHD女性は、月経周期以外でも、ピルの開始や産後、更年期など、ホルモンが大きく変動する場面で、気分障害や不調を起こしやすいという研究報告も増えています。
つまり、「ホルモンの波」がある時期すべてで、心身の不調リスクが高まる可能性があるのです。
本研究には、「自己申告による診断」「オンライン調査」「記憶に頼った症状報告」など、いくつかの限界があります。
それでもこの研究は、「ADHDの女性はPMDDのリスクが高い」という現実を明らかにすることができました。
今後は、毎日記録をつける詳細な追跡調査や、なぜADHD女性がPMDDになりやすいのか、生物学的メカニズムの解明、より効果的な治療法の開発が期待されています。
月経やホルモンの波で「いつも以上につらくなる」ADHD女性の大変さは、本人にも周囲にも見えにくいものです
こうした研究を通して、少しでも多くの人に正しい理解と配慮が広がっていくことが願われます。