12万年前の「お尻引きずり痕」を発見
研究チームは南アフリカのケープ南海岸にて、長さ約95センチ、幅13センチの線状痕が刻まれた砂岩ブロックを発見しました。
この痕跡は、片端がはっきりとした盛り上がりを伴い、内部には5本の平行な筋が確認されました。
調査チームは形状・寸法・周辺環境・他の動物の痕跡などを総合的に検討。
その結果、「これはイワダヌキが地面にお尻をこすりつけて引きずった際にできた“お尻引きずり痕”の化石であり、おそらく世界初の発見である」と結論づけたのです。
【こちらがイワダヌキの残した「お尻の引きずり跡」とされる化石の画像】
この痕跡のすぐ横に見られる盛り上がりは、イワダヌキの糞が化石化した「コプロライト」である可能性も指摘されています。
つまり、イワダヌキは歩きながらお尻を引きずり、途中で“うんちの落とし物”までしていったのかもしれません。
チームはこの痕跡の発見に際し、ヒョウやゾウ、人類、他の動物や自然現象が生んだ可能性も慎重に検討しましたが、「お尻引きずり+糞化石」という組み合わせは、現生イワダヌキの行動習性と最もよく一致するものでした。
さらに、イワダヌキは長年同じ岩場に集団で排尿・排便することで、尿や糞が混ざり合い「ハイラシウム」と呼ばれる黒っぽい堆積物を形成します。
この堆積物は数万年単位で保存され、花粉や植物DNAなど古環境データの宝庫でもあり、気候変動や生態系の変化を読み解く“天然アーカイブ”となっています。
今回発見された「お尻引きずり痕」の化石は、ただ珍しいだけでなく、「動物のささいな日常行動も地層の中に残り、数万年後の科学者たちに“その生態”を伝える証拠になりうる」ということを教えてくれています。