DHAの新たな顔とは?“筋肉の収縮”をコントロールする力!?
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、サバやイワシ、サンマなど青魚に豊富な「n-3系多価不飽和脂肪酸」です。
これまでDHAの健康効果といえば、動脈硬化の予防や脳機能の維持、認知症予防など「長期的な摂取で効く作用」が中心に語られてきました。
一方、最近の研究では、DHAが血管や消化管の壁に存在する“平滑筋”と呼ばれる筋肉に対し、摂取してすぐに収縮を抑える働きがあることもわかってきています。
平滑筋は緊張を保つことや収縮によって内臓や血管の働きの維持していますが、自分の意思で動かせないのも特徴です。
そして今回の研究で注目された「精管」は、精巣から尿道まで精子を送り出すパイプのような器官です。
精管の壁には発達した平滑筋があり、射精において重要な役割を果たしています。
しかし、精管の“過収縮”や“異常な収縮パターン”が起こると、精子の流れが妨げられてしまいます。
精管の過度の収縮が、精液の通過障害や運動精子数の低下につながり、男性不妊の原因となることさえあるのです。
この研究では、DHAがこの精管の収縮にどんな影響を及ぼすのかを、ラットの精管平滑筋を用いて調べています。
研究チームは、交感神経から分泌されるノルアドレナリンという物質で精管を収縮させ、そこにDHAをさまざまな濃度で加えて、筋肉の反応がどう変わるかを詳細に観察しました。
また、筋肉の収縮に必要なカルシウムイオン(Ca²⁺)がどのルートで細胞に入るか、どの分子がDHAの作用ターゲットになるのかについても詳しく検証しました。