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ソーシャルメディアが押し付ける非現実的なアイデアとは / Credit:Canva
psychology

ソーシャルメディアが刷り込む2つの「非現実的なアイデア」とは? (2/2)

2025.11.17 11:30:55 Monday

前ページ幻想その1:「常に旅行をしているのが普通」というアイデア

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幻想その2:「仕事を辞めて自由になるべきだ」というアイデア

もう一つソーシャルメディアが広めている非現実的なアイデアが、「安定した仕事を辞めて、自分らしく自由に生きるべき」というものです。

SNSを見ていると、おしゃれな自宅オフィスで仕事をするインフルエンサー、旅をしながら働くデジタルノマド、あるいは「9時–17時の働き方は時代遅れ」と語る動画が並びます。

こうした投稿が繰り返し流れてくることで、通常の仕事が「退屈で、自分の可能性を潰すもの」と見なされがちになっています。

しかし、心理学的研究はもっと違う姿を示しています。

ブラジルの340人の社会人を対象にした研究(2022年)では、「仕事の満足度」や「意味の感じ方」は、職場を辞めるかどうかで決まるのではなく、自分自身が仕事をどう捉え、どう工夫するかに強く依存していることが分かりました。

この研究が注目したのは「ジョブクラフティング」と呼ばれる行動です。

これは、仕事のやり方を少し変える、担当する役割の中で自分に合う工夫を加える、仕事の意味づけ(認知)を変えるなどの、「自分の手で仕事をより良くする工夫」を指します。

特に重要視されたのが、認知的クラフティング(仕事の意味づけを自分の中で変えること)で、これがもっとも強く「仕事の意味」や「満足度」を高めていました。

つまり、仕事そのものを変えなくても、内面の調整によって「やりがい」や「自由さ」を感じられる可能性があるのです。

もちろん、合わない職場を離れること自体は正当な選択肢です。

ただし、SNSが作り出す「仕事を辞める=自由で幸せ」という単純な図式は、現実には当てはまりません。

経済的なリスクや新たな不安が増え、むしろストレスが強まる場合もあります。

大切なのは、「辞めるか、辞めないか」という二択ではなく、“自分にとって何が意味のある働き方なのか”を考えることです。

極端な選択ではなく、工夫や調整の中にも自由は存在します。

ここまでで2つの点を紹介したように、SNSが押し付ける「理想のライフスタイル」は、現実とはしばしば大きくズレています。

旅も、仕事も、誰かの派手な成功例ではなく、自分自身にとっての心地よさを基準に選んでいくことこそが、長い目で見た幸福につながるのです。

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