これまで観測された最大の星の痕跡を発見――太陽の1000〜1万倍
これまで観測された最大の星の痕跡を発見――太陽の1000〜1万倍 / Image credit: Adolf Schaller / STScI
space

これまで観測された最大の星の痕跡を発見――太陽の1000〜1万倍 (2/3)

2025.11.27 17:00:07 Thursday

前ページ星にも“サイズ制限”がある──はずだった

<

1

2

3

>

星の限界をぶち抜く「太陽1万個分の初代星」がいた可能性

星の限界をぶち抜く「太陽1万個分の初代星」がいた可能性
星の限界をぶち抜く「太陽1万個分の初代星」がいた可能性 / Credit:Canva

宇宙で最初に輝いた初代はどんな存在だったのか?

この謎に挑むため、米バージニア大学などの研究チームはコンピュータ上に超巨大初代星を再現しました。

架空の星をモデル化し、その星が一生の最期にどんな元素をどれだけ作り出して周囲に撒き散らすかを計算したのです。

特に窒素や酸素、炭素、ネオンといった元素に注目し、星の寿命の中でそれらがどれくらい合成され、どの段階でどれだけガスとして宇宙空間に放出されうるかを詳細に評価しています。

そして計算の結果、太陽質量の1000倍から1万倍程度という質量レンジの星だけが、銀河GS 3073で観測された極端な元素バランスを再現できることが示されました。

言い換えれば、この窒素過剰の謎を解くには「1000倍より小さくてもダメ、1万倍を超えてもダメ」という質量の窓が存在したのです。

小質量では窒素が十分作られず、逆に大きすぎる星では酸素が作られすぎてしまい、窒素と酸素の割合(N/O比)が観測値に合わなくなるためです。

以上の結果は、銀河GS 3073に超巨大な初代星が存在したという仮説を強力に支持します。

実際、GS 3073で観測されたような窒素対酸素の異常比(N/O=0.46)は、他のどんな種類の星や爆発でも説明できないため、これこそ超巨大Pop III星の「元素の足跡」であると著者らは結論付けています。

まさに銀河に残された化学組成の化石記録から、太陽の何千倍ものモンスター星の存在を逆算して突き止めたことになります。

これは「靴のサイズから持ち主を当てる」ようなもので、残された元素比という足跡から当時の星の大きさを割り出したのです。

さらに注目すべきは、この怪物星が最期にブラックホールへと崩壊した可能性です。

GS 3073の中心には太陽質量の約1億6千万倍にもなる巨大ブラックホール(活動銀河核)が実際に存在しますが、今回のモデル計算によれば、太陽1000個分程度の星が早い時期に生まれてブラックホールへ崩壊し、サブエディントン程度の割合でガスを食べ続ければ、その質量に到達しうることが示されています。

言い換えれば、「怪物級の初代星がそのまま巨大ブラックホールの親となった」というシナリオが、具体的な数字で裏付けられた形なのです。

次ページ“生まれつきデカいタネ”が巨大ブラックホール問題を解く

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

宇宙のニュースspace news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!