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Credit: canva
health

運動により「がんリスクが下がる」仕組みを解明

2025.12.11 12:00:13 Thursday

健康のために「運動は大切」と誰もが知っています。

特に、定期的な運動ががんのリスクを減らすことは、これまでの多くの研究で示されてきました。

しかし、なぜ走ったり筋トレすることが、体内の「がん細胞」という厄介な存在を抑え込めるのか?

その具体的な仕組みは、長年の大きな謎でした。

そんな中、米イェール大学(YU)の研究チームがマウスを使った最新研究で、この「運動とがん予防」をつなぐ驚くほどシンプルで、かつ劇的なメカニズムを解明しました。

その答えは、私たちの体内で行われている「グルコース(ブドウ糖)」をめぐる熾烈なエネルギーの奪い合いにあったようです。

研究の詳細は2025年12月1日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

Study Reveals Surprisingly Obvious Reason Why Exercise Reduces Cancer Risk https://www.sciencealert.com/study-reveals-surprisingly-obvious-reason-why-exercise-reduces-cancer-risk
Precancer exercise capacity and metabolism during tumor development coordinate the skeletal muscle–tumor metabolic competition https://doi.org/10.1073/pnas.2508707122

運動が引き起こす「エネルギーの方向転換」

これまで、がん細胞は「エネルギーの暴食家」として知られていました。

通常の細胞よりもはるかに多くのグルコース(ブドウ糖)を取り込み、それを燃料にして猛烈なスピードで増殖していきます。

例えるなら、グルコースはがん細胞にとっての最上級のガソリンのようなものです。

この研究では、乳がんや悪性黒色腫の腫瘍を持つマウスを使い、運動するグループ運動しないグループに分けて、体内の代謝を詳細に追跡。

その結果、ある決定的な違いが明らかになりました。

それは、運動が「グルコースの輸送ルート」を強制的に変更していたという事実です。

筋肉 VS がん細胞:勝者は運動した筋肉

運動をすると、私たちの骨格筋(普段動かしている筋肉)は、すぐに大量のエネルギー(グルコース)を必要とします。

研究者たちが分子トレーサーを使ってグルコースがどこへ向かうかを追跡したところ、運動を続けたマウスの体内では、グルコースが次のような方向転換を起こしていました。

  1. 運動しないマウス: グルコースは、主に増殖したがん細胞へと流れ込み、腫瘍の成長を加速させる。

  2. 運動するマウス: 運動によって活性化した筋肉細胞や心臓の細胞が、体内のグルコースを激しく取り込み始め、これを酸化させてエネルギーとして使い切る。

つまり、運動は体内のエネルギー需要のバランスを劇的に変え、腫瘍細胞が使うはずだったグルコースを、筋肉細胞が横取りするような状態を作り出していたのです。

このエネルギーの奪い合いの結果、運動グループのマウスは、運動しなかったマウスに比べて、腫瘍のサイズが大幅に(最大で約60%)縮小していました。

これはエネルギー源を絶たれたがん細胞が、増殖できず、いわば「飢餓状態」に陥ったことを示しています。

次ページがん細胞を「成長停止」に追い込む分子の戦い

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