「朝の光」が体内時計を動かしている
研究の出発点は、現代人が「生物学的な暗闇」で生活しているという問題意識です。
人間の体は、概日リズムと呼ばれる体内時計によって、覚醒や睡眠、ホルモン分泌を調整しています。
このリズムを最も強く動かす合図が「朝の光」です。
太陽光が目に入ると、脳の視交叉上核が刺激され、体温やホルモンのリズムが一日の始まりへと切り替わります。
しかし現代では、朝の時間帯を屋内で過ごす人が大半です。
しかも室内照明の多くは、屋外の自然光と比べると極めて暗く、体内時計を十分に刺激できません。
研究チームは、この「朝の暗さ」が体にどのような影響を与えるのかを詳しく調べました。
実験には、平均24歳の健康な男女20人が参加。
参加者は5日間にわたり、朝8時から正午まで異なる照明環境で過ごしました。
一方は55ルクスの暗い白熱灯、もう一方は800ルクスの明るい蛍光灯です。
その結果、暗い光のグループでは、ストレスホルモンであるコルチゾールのリズムが乱れました。
本来は夕方から夜にかけて下がるはずのコルチゾールが、高いまま維持されていたのです。
これは、うつ病患者でよく見られる特徴と一致します。
さらに睡眠にも変化が現れました。
暗い光の環境では、睡眠時間が平均で約25分短くなり、深い睡眠が夜の前半から後半へとずれ込んでいました。
この「深い睡眠の遅れ」も、うつ病の睡眠構造に共通する変化です。
参加者自身も、気分が落ち込みやすく、眠気が強いと感じるようになったと報告しています。
一方、明るい光のグループでは、こうした悪化は見られませんでした。



























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