社会が実際より悪い場所に見えてしまっている
研究チームはさらに、この誤解が人々の気持ちや社会への見方にどのような影響を与えるのかを調べました。
参加者を2つのグループに分け、片方には「実際に有害な投稿をしているユーザーは少数派である」という事実をまとめた短い文章を読んでもらい、その後の心理状態を測定しました。
すると、事実を知ったグループは、知らなかったグループに比べて気分が前向きになり、アメリカ社会が“道徳的に悪化している”という感覚も弱くなっていました。
また、「ほかの一般ユーザーは有害な投稿を望んでいない」という理解が高まり、自分と他人の価値観のズレを過大評価する傾向も改善されていました。
ただし、この実験では、冷笑的な見方や、人間に対する信頼感のようなものは、短い情報提供だけでは特に変化が見られませんでした。
つまり、SNSを見て感じる「社会が道徳的に悪化している」といった印象は、事実を知るだけでも和らぐ余地がある一方で、世の中や他人を根本的にどう見るかという土台は、もっと時間をかけて形づくられているもので簡単には変わらないことを示しています。
研究者は、SNSで目にする光景が“社会全体の縮図”ではないことを理解することが、健全な社会観を保つうえで重要だと指摘しています。
もしSNSが社会への不信感や分断を強めていると感じているのなら、それはただの錯覚かもしれません。現実そのものが急に変わったわけではありません。
実際には、ほんの少数のユーザーが大量に投稿しているだけなのに、その声が大きく見えることで、人々の認識がゆがんでしまうのです。
少なくとも今回のアメリカの調査が示す限り、SNSは現実の社会の投影というより、“活動量の極端に多い少数派の声”が増幅された空間でしかないことになります。
これはアメリカに限らず日本においても同様でしょう。
それを理解するだけでも、私たちが感じる不安や社会への不信感は大きく変わる可能性があります。


























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