17種類の臓器を調べてわかった全身キメラ体質

研究チームがまず直面したのは、「女性の遺体から採った血液なのに、DNAパターンが二人分に見える」という奇妙な結果でした。
DNA分析で得られた「DNAの型(型番のようなもの)」が、ふつうの単独サンプルではなく、混合サンプルのような形になっていたのです。
そこで研究者たちは、「汚染(別のDNAが入り込むこと)か第三者の混入か、それとも本人の体の中に何かあるのか」を切り分けるため、前述のとおり解剖で取り出した17種類の臓器や組織から、合計18のサンプルを採取し、すべてについて同じようにDNA解析を行いました。
その結果は、ある意味で予想外でした。
腎臓、肝臓、肺、心臓血、脳、骨格筋、肋軟骨、さらには腟上皮や毛根つきの毛髪に至るまで、どのサンプルからも「同じ二人分のDNAパターン」が検出されたのです。
違っていたのは、二人分の“混ざり具合”だけでした。
例えば、ある毛髪では「Y染色体の特徴」が多く、腎臓ではXとYの特徴がほぼ半々、他の多くの臓器では「X染色体の特徴」が優勢というように、臓器ごとに配合比率が変わっていました。
にもかかわらず、組み合わせそのものはすべて同じ。
これは、「別々の男性の血が混ざった」のではなく、「一人の体の中に2系統の細胞が全身に散らばっている」ことを強く示します。
決め手になったのは、性染色体の解析でした。
研究者たちがDNA分析を行った結果、この女性の体には、ふつう女性の細胞で見られるXXと、ふつう男性の細胞で見られるXYの2つの細胞系統が共存していることが明確になりました。
さらに常染色体とX染色体を使ったDNA分析からは同じ母由来のX染色体を共有していることが示され、二つの系統が「まったく別の卵子」ではなく、「一つの卵子から分かれた姉妹のような関係」にある可能性があると考えられます。
興味深いのは、卵巣の所見です。
解剖で確認された子宮や腟は正常な女性の構造で、精巣など男性の性腺組織は認められませんでした。
卵巣を顕微鏡で見ると、卵子のもとになる卵原細胞(卵子の前の段階の細胞)は、キメラではない可能性があると報告されています。
つまり、体の多くの場所ではXX+XYの“ごちゃまぜ配合”なのに、卵子につながる細胞の系統は混ざっていない可能性がある、ということです。
実際、この被害者女性は過去に男児(息子)の出産を行っていることも報告されました。
研究チームは、この全体像から、この症例を「先天的なパルテノジェネティック 46,XX/46,XY キメラ」と位置づけています。
では、このような二系統の細胞はどうやって生まれたのでしょうか。

























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