空腹ホルモンの喪失は、ヘビの待ち伏せ戦略にぴったり
さらに詳しく解析すると、グレリン遺伝子の壊れ方は、ヘビのグループごとにかなり違うことが分かりました。
たとえば、ボアやニシキヘビでは、部分的に残った「壊れかけのグレリン遺伝子」が見つかりました。
一方で、クサリヘビやコブラの仲間では、もはや遺伝子の痕跡すらほとんど見つからない状態でした。
この点で研究チームは、ヘビにとって「空腹ホルモンを失ったほうが有利になる」と考えています。
哺乳類の場合、空腹になるとグレリンが増え、脂肪を燃やしながら積極的に食べ物を探す行動につながります。
一方で、多くのヘビやカメレオン、ガマトカゲ属は、「sit-and-wait(待ち伏せ型)」と呼ばれる狩り方をします。
自分から広く動き回るのではなく、1か所でじっとして、獲物が近くに来るのを待つスタイルです。
この生活スタイルでは、「お腹がすいたから動き回る」ことは、むしろエネルギーの無駄になります。
研究チームは、ヘビはグレリンとMBOAT4を失ったことで、空腹のときでもあまり「食べたい」という強い信号が出ず、代謝をできるだけ下げてエネルギーを温存することに役立ってきたと考えています。
そしてこれが、長いあいだほとんど動かずに過ごすという生活スタイルと結びついてきた可能性が高いというのです。
実際、ヘビでは長い断食のあとに巨大な獲物を飲み込むと、消化のために代謝が数日間大きく上がることが知られています。
つまりヘビたちは、断食中は「省エネモード」でじっとし、食後は一気に「フルパワーモード」で消化にエネルギーを集中させる、という極端なオン・オフの切り替えをしていると考えられます。
これは、グレリンを使ってこまめに食欲や脂肪の使い方を調整している哺乳類とは、かなり違ったやり方です。
今回の研究は、「グレリンがなくても生きていけるどころか、むしろその方が都合が良い生き方もある」ということを示しました。
今後は、グレリンを失った爬虫類たちが、ほかのホルモンや遺伝子ネットワークをどう使ってエネルギーを管理しているのかを調べることができます。
これにより、人間を含む他の動物における空腹や代謝の仕組みをより深く理解できる可能性があります。
























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