時間を追うと見えてきた「ヘイト→心の悪化」という流れ
チームは、オーストラリアで行われた3つの大規模な縦断調査を分析しました。
縦断研究とは、同じ人々を複数の時点で追跡する手法で、因果関係の方向性を検討するのに適しています。
その結果、興味深いことが分かりました。
ある一時点だけを見ると、差別的態度と心理的苦痛の関係は弱く、一貫していなかったのです。
つまり、「心の不調な人ほど差別的になる」とは言えませんでした。
ところが時間の流れを考慮すると、様相は一変します。
人種差別的な考えが強まった人ほど、その後に不安や抑うつが悪化していたのです。
特に印象的だったのは、新型コロナウイルス流行初期の調査でした。
この研究では、6カ月の間にヘイト的態度が強まった人ほど、精神的なつらさが増していました。
また別の調査では、社会全体のメンタルヘルスが改善傾向にある中でも、差別意識が強い人ほど回復が遅れることが示されました。
さらに重要なのが「社会的つながり」の役割です。
孤独感や疎外感が強まった人ほど、偏見も心理的苦痛も同時に悪化していました。
統計的に社会的つながりを考慮すると、ヘイトと心の不調の直接的な関連が弱まる場合もありました。
研究者たちは、「排除されている感覚」こそが、偏見とメンタルヘルス低下の共通の原因である可能性を指摘しています。
ヘイトの刃は「自分の心」に刺さるもの
研究者によれば、偏見的な思考は本質的に「脅威」を伴います。
他集団を自分の安全や文化、資源への危険として捉え続けることで、心は常に警戒状態に置かれます。
この慢性的な緊張が、不安や抑うつを静かに蓄積させていくと考えられます。
今回の研究が示すのは、ヘイトは社会問題であると同時に、ヘイト思考を持つ本人のメンタルヘルスを蝕むリスク要因でもあるという事実です。
心のケアだけでは偏見は減らず、偏見を放置すれば心もすり減っていく。
だからこそ研究者たちは、社会的つながりや包摂を高める取り組みの重要性を強調します。

























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