ワニなのに「走る捕食者」だった?
現代のワニは水辺で暮らす半水生動物ですが、この新種が生きていた後期三畳紀のイギリス南西部は、石灰岩からなるカルスト地形が広がる沿岸環境でした。
地面には洞窟や割れ目が多く、死んだ動物の骨がそこへ流れ込み、堆積物として保存されました。
この地層からは、初期の恐竜テコドントサウルスやペンドライグ、小型爬虫類のクリプトヴァラノイデス、滑空性爬虫類クエネオサウルスなど、多様な動物が見つかっています。
今回の新種ガラハドスコスも、そうした生態系の一員でした。
骨格の特徴から、この動物は長く細い四肢をもち、直立的な姿勢で陸上を走るタイプだったと考えられています。
論文では「二足歩行を示す決定的な証拠はない」と慎重に述べられていますが、少なくとも現生ワニのような重厚な体型ではなく、より軽量で機動性の高い体つきだったことは確かです。
イメージとしては「ワニの顔をしたサイトハウンド犬」。
下草の中をすばやく移動し、小型の爬虫類や両生類、初期の哺乳類を狙う陸上捕食者だった可能性があります。
この時代は、三畳紀末の大量絶滅の直前にあたります。
火山活動の活発化によって地球環境が大きく変化する直前、ワニの祖先たちはすでに多様な体型と生態を獲得していたのです。
ワニの形状も多様だった
今回の発見は「ワニは昔からずっとあの姿だった」という私たちの固定観念を揺さぶります。
現代のワニは水辺の王者ですが、その祖先の一部はスリムで俊敏な陸上ハンターでした。
進化の歴史をさかのぼると、ワニの仲間は思いのほか多様で、実験的ともいえる体型を試していたことがわかります。
博物館に半世紀眠っていた骨が、最新の解析によって新種としてよみがえる。そこには、進化の物語がまだまだ“発掘途中”であるという事実が詰まっています。
もし三畳紀の高地に立っていたら、あなたの足元を、細身の“ワニ”が風のように駆け抜けていたかもしれません。



























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