ブラックホールと質量の起源がつなぐ理論

素粒子物理学には、なぜ粒子が質量を持つのかという大問題があります。
その中心にいるのがヒッグス場で、そこには約「246ギガ電子ボルト(GeV)」という重要なスケールがあります。
246GeVをエネルギーとして温度に換算すると約2800兆度になりますが、この値の本当の意味は、ヒッグス場が真空に持つ基本的な値にあります。
より突っ込んで言えば「その下地が宇宙の中でどれくらいの強さで保たれているかを示す基準値」となります。
やや詩的に言えば「現実を押し固める見えない力」あるいは、SF好きな人向けてかなり「それっぽく」言うならば「ヒッグス場がこの宇宙でどれだけ“現実に食い込んでいるか”を示す値」とイメージしてもよいかもしれません。
(※計算的にも、フェルミオンの質量はおおむね「(その粒子のヒッグス場との結びつきの強さ)×(246 GeV)」を√2で割った値で決まります)
今回の論文では、このヒッグス場に深く関連した値に近いものが、ブラックホールの計算から導かれました。
具体的にはまず、理論の元となる7次元を私たちの4次元世界へ戻す操作(次元削減)を行いました。
7次元は私たちには知覚できないので、実際に観測できる4次元の世界に「翻訳」してあげる必要があるからです。
するとどうなったか。
7次元空間の”ねじれ”が4次元の世界に現れたとき、ヒッグス場にそっくりな性質を持つ「場」が自然に出現し、その強度も246GeVの近くになったというのです。
これはきわめて驚くべき一致です。
普通に考えれば、「ブラックホールが蒸発した後の残骸に情報が残るかどうか」と「素粒子が重さを持つ仕組み」は、まったく別の物理現象です。
研究分野も完全に分かれています。
ところが今回の結果を受けて研究者たちは、この一見無関係な二つの問題が、実は同じ7次元の”ねじれた幾何学”によってつながっている可能性がある、と提案しています。
ブラックホールが最後に消えずに残骸を残す仕組みと、すべての素粒子が重さを持つための基本スケールが、同じ一つの理論の中から出てくる——もしこれが正しければ、宇宙論と素粒子物理学という二つの巨大な謎が、一本の鍵で開かれることになります。




























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