「子供の数が理想より多い」が重くのしかかる理由は何か
今回の研究で最もはっきりしていたのは、「理想より多く子供を持った親」は、人生満足度や家庭生活への満足度、仕事への満足度、感情のバランスといった複数の面で、他のグループより低い傾向を示したことです。
研究者たちは、この結果を比較的はっきりとした傾向だとみています。
ここで大事なのは、このグループには「最初から子供をまったく望んでいなかったのに親になった人」だけでなく、「1人のつもりだったのに2人になった人」のようなケースも含まれていることです。
つまり、「理想より多い」といっても中身はさまざまですが、その全体として幸福度の低さと結びついていたのです。
では、なぜこうした傾向が出るのでしょうか。
この研究だけでは原因を断定することはできません。
それでも研究者たちは、いくつかの可能性を挙げています。
ひとつは、自律性の低下です。
人は、自分の人生を自分で動かしていると感じられるとき、心の安定を保ちやすいと考えられています。
しかし、子供が理想より多い場合、時間やお金の余裕が失われやすくなり、自分の思い通りに動ける範囲が狭くなりやすいかもしれません。
その結果、「自分で人生をコントロールしている」という感覚が弱まり、幸福度にも影響する可能性があります。
もうひとつは、経済的・生活的な負担です。
子供が増えれば、当然ながら教育費や生活費、日々の世話にかかる手間も増えていきます。
しかも「理想より多い」ということは、そうした負担が自分の想定を上回っているということでもあります。
そのズレが長く続けば、心理的な重荷になっても不思議ではありません。
一方で、「理想より少ない」ことが若い世代でただちに深刻な問題にならなかったのも興味深い点です。
これは、若い時期にはまだ将来子供を持てる可能性が残っているからだと考えられます。
今は理想より少なくても、これから叶えられるかもしれない。
そう思えるうちは、それは「失われた目標」ではなく、「まだ途中の目標」です。
しかし年齢が上がると状況は変わります。
出産や子育ての現実的な可能性が低くなると、理想とのズレは「まだ叶うかもしれない願い」ではなく、「叶わなかった願い」として感じられやすくなります。
そのため、子供を望んでいるのに持てなかった人や、理想より少ない子供数の親では、年齢が高くなるにつれて幸福度の低下が見られたのでしょう。
反対に、今回の研究では、宗教性や地域の価値観、保育環境がこの関係を大きく左右する証拠は、あまり見つかりませんでした。
これは少し意外な結果です。
地域の雰囲気や宗教観が強く影響しそうにも思えますが、少なくとも今回の分析では、もっとも重要だったのは「本人の理想と現実のズレ」そのものでした。
この結果から学べることはかなりはっきりしています。
子供の数そのものに「正解」はない、ということです。
1人が正しいわけでも、2人が標準というわけでも、たくさんいるほど幸せになれるわけでもありません。
大切なのは、自分が本当に望む家族の形と、実際の暮らしがどれだけ一致しているかです。
その意味で、この研究は家族計画の重要性も示しています。
自分は何人くらい子供を望んでいるのか、パートナーはどう考えているのか。
周囲の空気や「普通こうするものだ」という感覚に流される前に、そこを言葉にして確かめておくことは、将来の幸福にとって案外大きいのかもしれません。
避妊に対しても、「自分の望みを守るための手段」として見ることができます。
幸福を決めるのは子供の数そのものではなく、自分の望みと現実がどれだけ一致しているかでした。
家族のかたちは人それぞれですが、だからこそ「何人が正しいか」ではなく、「自分はどう生きたいのか」を考えることが大切なのです。





























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