「美しさ」への反応は、年齢と共に研ぎ澄まされていく
今回の研究で特に面白いのは、赤ちゃんが何を長く見たかだけでなく、視線の変化を時間ごとに細かく調べた点です。
映像が表示された直後、とくに若い乳児では、規則的で単純な動きをするパターンにまず注意が向きやすい傾向が見られました。
これは、視覚的にわかりやすく、処理しやすいものに自然と目が向く反応だと考えられます。
しかし、その後しばらくすると、視線はより複雑で変化に富んだ動きのパターンへ移っていきました。
そして、この段階で長く見られやすかったのは、大人から相対的に「美しい」と選ばれやすかった動きでした。
たとえば、点が鳥や魚の群れのように動くものや、渦のように広がるものなどが、より美しい動きとして評価されていました。
つまり、最初は「わかりやすい動き」に目が向き、その後に「大人が美しいと感じる動き」へ注意が移っていくという、二段階の反応が見られたのです。
さらに、この「美しいと評価された動き」への反応が現れるタイミングは、年齢によって変わっていました。
生後4か月児では約1.8秒後に現れたのに対し、年齢の高い群ほど早く現れ、24か月児では約0.5秒後、成人では約0.4秒後に確認されたのです。
この結果は、美しさに関係する注意の仕組み、あるいはその土台となる視覚的な好みが、かなり早い時期から働いている可能性を示しています。
そして成長とともに、その反応がより素早く現れるようになるのかもしれません。
もちろん、研究者たちはこの結果だけで、「赤ちゃんが大人と全く同じ美的感覚を持っている」と断定しているわけではありません。
赤ちゃんが複雑な動きに引きつけられた理由としては、美しさだけでなく、新しさ、情報量の多さ、興味を引く動きへの反応なども考えられます。
また、成人の美的判断には知識や文化的背景が大きく関わるため、赤ちゃんと成人がまったく同じ意味で「美」を共有しているとは言えません。
それでも今回の研究は、人間の美的感覚の土台になるような視覚的な好みが、生後数か月の時点ですでに働いている可能性を示した点で重要です。
今後は、自然界の動きを表す点のパターンと、そうではない人工的な動きの違いを比べたり、ヒト以外の霊長類にも同じような好みがあるのかを調べたりする研究が予定されています。
私たちが「きれいだ」と感じる感覚は、言葉や知識よりも前に、目が自然と引きつけられるところから始まっているのかもしれません。



























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