ふさふさの毛は、海の中で消えるための迷彩だった
詳しい分析の結果、この魚は既知のカミソリウオ科の種とは異なる新種だと確認されました。
標本の体長は18〜34ミリメートルほどとされ、体の前方が比較的深く、全体に長い糸状の突起を豊富に持つことが特徴とされています。
この突起は、特に吻、あご、頭部、ひれの端に密集しており、魚全体を「毛むくじゃら」に見せています。
その姿が、赤茶色の毛に覆われたスナッフルパガスを連想させたことから、種小名にスナッフルパガス(snuffleupagus)が選ばれました。
【ミスター・スナッフルパガスとの比較画像がこちら】
ただし、この“毛”は可愛らしさのためにあるわけではありません。
野外観察では、この魚は糸状の赤い大型藻類が密生する場所と強く結びついていました。
体色も赤、オレンジ、ときに緑がかった色を帯び、周囲の藻類やサンゴ礁環境に溶け込むようになっています。
つまり、ふさふさした姿は、海中で目立つためではなく、逆に「見つからない」ための迷彩である可能性が高いのです。
さらにチームは、見た目だけでなく、DNA解析やマイクロコンピューター断層撮影による骨格比較も行いました。
その結果、よく似た既知種(Solenostomus paegnius)とは遺伝的にも大きく異なっていました。
また、本種は椎骨数が36個であることなど、骨格上の特徴でも他の同属種と区別されています。
つまり、この魚は「スナッフルパガスに似ているから面白い魚」ではなく、形態、骨格、DNAの複数の証拠から新種と判断された、れっきとした科学的発見なのです。
現時点で、本種はオーストラリア北東部のコーラル海、パプアニューギニア、ニューカレドニア、フィジー、トンガを含む南西太平洋域から知られています。
サンゴ礁はカラフルで目立つ生き物の宝庫に見えますが、その一方で、背景になりきる達人たちも暮らしています。
赤毛マンモスのようなこの小さな魚は、派手な姿でありながら、実は海の中で姿を消す名人でした。
そして、その隠れ上手な体こそが、科学者に20年越しの発見をもたらしたのです。





























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