Credit:Open AI,ナゾロジー編集部
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没入感の高いゲームクリア後の喪失感は測定可能な心理現象だった (2/2)

2026.05.24 22:00:15 Sunday

前ページゲームの終わりは、ただの「遊び終わり」ではない

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クリア後の空虚感は4つの心理要素から成り立っていた

調査の結果を分析したところ、ゲームクリア後の空虚感は、大きく4つの心理要素として整理できることが示されました。

1つ目は、ゲーム関連の反すう(game-related rumination)です。

反すうとは、同じことを頭の中で何度も考え続けてしまうことです。

ゲームの場合、それは物語の結末、登場人物との会話、印象的な音楽、別の選択をしていたらどうなったかという想像として現れます。

2つ目は、体験の終わりを受け入れにくい感覚です。

英語では、「challenging end of experience(体験の終わりの困難さ)」と呼ばれています。

これは、冒険が終わったことや、その世界との関わりが一区切りを迎えたことを、心がすぐには受け入れられない状態です。

プレイヤーにとって、ゲームの世界は画面の中だけにあるものではありません。

長い時間をかけて歩き回り、失敗し、成長し、選択してきた場所だからこそ、その終わりは小さな別れのように感じられます。

3つ目は、再プレイしたくなる感覚です。

英語では、「necessity of repeating the game(再プレイの必要感)」と呼ばれています。

これは、クリア後にもう一度同じゲームを始めたくなる気持ちを指します。

もちろん、楽しかった作品をもう一度遊ぶこと自体は自然な行動です。

しかしこの研究では、その再プレイ欲求が、終わってしまった体験をもう一度取り戻したいという感情とも関係している可能性が示されています。

4つ目は、「media anhedonia(メディア快感消失)」です。

快感消失とは、本来なら楽しいはずのものを楽しみにくくなる状態を意味します。

ここでは、ほかのゲームや映画、ドラマなどを見ても、クリアしたゲームほど満足できない感覚を指します。

ただし、研究ではこの要素は4つの中で最も弱く報告されました。

そして、この4つの要素の中でもっとも強く報告されたのは、1つ目の「反すう」でした。

つまり、ゲームクリア後の空虚感の中心は、「何も楽しめない」という感覚よりも、「終わったゲームのことを考え続けてしまう」状態と理解するのが正しいようです。

さらにこの研究からは、クリア後の空虚感の強さが、抑うつ症状、幸福感の低さ、反すう傾向、感情処理の難しさと関連していることも示されました。

感情処理の難しさとは、不安や寂しさのような感情をうまく整理できず、心の中に抱え込みやすい状態を指します。

また、ロールプレイングゲームをよく遊ぶ人では、このポストゲーム・デプレッションが強く出やすい傾向も報告されました。

これは、ロールプレイングゲームがキャラクターの成長、物語の選択、仲間との関係などを通じて、プレイヤーに深い没入感を与えやすいためだと考えられます。

研究で直接述べられているわけではありませんが、こうした4つの要素はゲーマーにとってのあるあるな現象と関連しているように見え、納得感があります。

ゲームの反すうは、プレイヤーでなければ伝わらないような何気ないキャラクターの台詞が名言として広まる現象と関連するように見えますし、2つ目の「体験の終わりを受け入れにくい感覚」はラスダン前や最後のセーブポイントから先へゲームを進められなくなる現象と関連するように見えます。

2周目要素を用意しないゲームに憤るゲーマーが多いのも、3つ目の「再プレイしたくなる感覚」との関連が想像できます。

研究ではもっとも弱い要素と述べられている「メディア快感消失」も、高齢のゲーマーほど新しいゲームを楽しめずレトロゲームに目を向ける現象と関連するように見えます。

今回の研究は、こうしたゲームクリア後の空虚感を「ただの気分」ではなく、質問票を通じて測定できる心理現象として示した点に意義があります。

一方で、この研究では、「ゲームクリア後の空虚感が強い人ほど、気分の落ち込みや考え込みやすさも強い」という関連は確認されましたが、どちらが原因なのかまでは分かっていません。

もともと考え込みやすい人ほどゲームの世界から気持ちを切り替えにくい可能性もありますし、反対に、強い喪失感がしばらく気分に影響している可能性もあります。

研究チームは、この点を明らかにするには、同じ人を長期間追跡する研究が必要だとしています。

また、この研究は「ゲームをクリアすると、うつになりやすい」「医学的な意味でうつになる」と示しているわけではありません。

ここで述べられている気分の落ち込みは、あくまで余韻のような心理体験であり、この現象を医学的なうつ病と関連させて捉えるべきではないと研究チームは説明しています。

しかしこうした報告を見ると、ゲームクリエイターが明確な2周目要素を用意することは、プレイヤーのメンタルケアのためにも必要なことなのかもしれません。

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