飼うことすら難しい小さな哺乳類
ヒメトガリネズミは北東アジアに分布する小型のトガリネズミで、北海道に生息する4種のトガリネズミ類の中では2番目に小さい種です。
トガリネズミ類は、体が小さい一方で非常に高い代謝を持っています。
人間でいえば、体の中に常に高速で回り続けるエンジンを抱えているような状態です。
そのぶん、環境の変化や餌不足に弱く、飼育下で健康を保つことが難しい動物とされてきました。
これまで比較的体が大きいオオアシトガリネズミでは、飼育下繁殖の報告がありました。
しかし、ヒメトガリネズミのような小型で扱いが難しい種では、繁殖成功例はありませんでした。
そこで研究グループは、北海道根室市で捕獲した個体や、飼育下で生まれた個体を用いて、札幌市円山動物園の施設で長期飼育とペアリング実験を実施。
行動はビデオで記録され、「接触」「求愛的接触」「マウント」といった行動に分類されました。
その結果、ヒメトガリネズミでは、他のトガリネズミ類で知られるような激しい攻撃を伴う交尾行動とは異なる特徴が見えてきました。
雌雄の間には、穏やかな接触や追尾を伴う、いわば「じゃれ合い」のような行動が見られたのです。
マウントの頻度は1時間あたり0.4〜0.8回程度で、こうした行動観察から、ヒメトガリネズミの繁殖行動が初めて定量的に記録されました。
小さな体で、どのように相手を受け入れ、どのように繁殖へ進むのか。
これまでほとんど見えなかった生活の一幕が、ようやく研究の対象として捉えられたのです。




























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