「ハサミのような付属肢」が、牙への進化をつなぐ
チームは、このハサミ状の付属肢を、真の鋏角が生まれる前段階の構造だと考えています。
言い換えるなら、ウロコディアは「完成したクモの牙」を持っていたわけではありません。
しかし、クモの牙やサソリのハサミへとつながる、鋏角の原型にあたる構造を持っていた可能性が高いのです。
これは、クモの牙が突然現れたのではなく、カンブリア紀の海にいた小さな捕食者の前方付属肢から、段階的に進化していったことを示す重要な手がかりになります。
さらにウロコディアの脚には、現在のカブトガニにも見られる呼吸器官「書鰓(しょさい)」に似た特徴も確認されました。
書鰓とは、薄い板が本のページのように重なった呼吸器官です。
今回の発見は、鋏角だけでなく、鋏角類がどのように呼吸器官を発達させていったのかを考えるうえでも重要です。
つまりウロコディアは、クモの牙の始まりを示すだけでなく、鋏角類というグループ全体の初期進化を読み解く鍵となる化石なのです。
【ウロコディアの実際の化石画像がこちら】
ウロコディアが生きていた5億年以上前の海には、すでに200種類を超える多様な動物が暮らしていたと考えられています。
その中で、小さな捕食者たちは、獲物を捕らえるための道具を少しずつ変化させていました。
その進化の延長線上に、現在のクモの牙やサソリのハサミがあると考えると、私たちが身近に見るクモの姿も、はるか古代の海とつながっていることになります。
今回の研究は、「クモの牙」の歴史を、現代の陸上世界から一気に5億年以上前の海へと押し戻すものです。
もちろん、5億1800万年前に現在のクモがいたわけではありません。
見つかったのは、クモそのものではなく、クモの牙につながる鋏角の祖先的な形です。
それでも、この小さな化石は、動物たちがどのように獲物を捕らえる能力を進化させてきたのかを知るうえで、非常に大きな意味を持っています。
岩の中に眠っていた数センチの化石は、クモの牙という身近で少し不気味な特徴が、5億年以上前の海で始まっていたことを教えてくれます。

























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