4500万年前に起きた謎のカエル大量死
ドイツ中央部カイゼルタール地方は、古くから化石の宝庫として知られていました。
この地方はかつて広大な沼地であり、馬・鳥・コウモリ・魚・カエルなどさまざまな動物たちが死んだ際、遺体を速やかに泥で覆うことで良好な化石として未来に送り届ける機能を果たしていました。
この地方から得られた化石資料は、古生物学の発展に多大な貢献を果たし、地球の動植物たちが数百万年にもわたってどのように進化してきたを教えてくれました。
しかし数々の化石のなかには、どのような状況で死亡したかがわからないものも存在しました。
特に4500万年前の地層からみつかった何百匹にも及ぶカエルたちの化石群は大きな謎でした。
馬や鳥ならば、泥や水に足をとられて群れ単位で溺れ死ぬことは考えられますが、水かきを持ち皮膚呼吸能力に優れるカエルが集団で死亡するには、特別な理由があったはずです。
これまでの研究で、寒さ・乾燥・水中の酸素不足などさまざまな説が唱えられてきましたが、どれも推測の域を出ませんでした。
そこで今回、アイルランド国立大学コーク校の研究者たちは、発掘されたカエルたちの化石の状態をもとに、大量死の原因を解明することにしました。
するとカエルたちの化石のかなりの部分が、体全体のパーツがそろった完全性の高い化石であり、骨にも傷が少ないことが判明します。
つまりカエルたちの死体は生前も死後も損傷を受けてはいなかったのです。
研究者の1人であるダニエル・フォーク氏は「カエルの骨には捕食者に襲われたり死肉を漁られたような痕跡(傷)はなかった」と述べています。
また地層や化石を分析したところ、カエルたちが大量死した時期に沼地が干上がったり大洪水が起きたという証拠もみあたりませんでした。
同様にプランクトンなどの大量発生により水中の酸素レベルが急激に低下という説も、否定されました。
大量死したカエルたちは交尾の時期以外は水から上がって生活する「ヒキガエル」に属する種であり、特定の水域で酸素不足が起きたならば、別の場所に簡単に移動することができたからです。
つまり、考えられる死因は環境変化や捕食者などではなかった可能性が高いのです。
では、いったい何がカエルたちに大量死を引き起こしていたのでしょうか?