「タリーモンスター」ってどんな生き物?
タリーモンスターは正式な学名を「トゥリモンストゥルム(Tullimonstrum)」といいます。
米イリノイ州にある石炭紀(3億5920万〜2億9900万年前)の地層から産出する「メゾンクリーク生物群」でのみ見られる古生物です。
最初に化石が見つかったのは1955年で、フランスのアマチュア化石収集家であるフランシス・タリーにより発掘されました。
学名のトゥリモンストゥルムは”タリーの怪物”の意で、そこから英名のタリーモンスターが来ています。
全長は約10センチと小柄ですが、マジックハンド式の口先を駆使して小さな獲物を捕食したと見られます。
問題はその分類です。
タリーモンスターは既知のどの古生物とも似ていなかったせいで、分類は困難をきわめました。
研究者らは、タコやイカの軟体動物、ゴカイやミミズの環形動物、約5億年前のカンブリア紀にいたオパビニアなど、いくつかの種と近縁であると提唱しましたが、いずれも決定的な証拠に欠けています。
ところが2016年に入り、長らく軟体動物の線が濃厚だった中で「タリーモンスターは脊椎動物である」という説が発表されたのです。
ヤツメウナギに近い脊椎動物だった?
この説は2016年に米イェール大学が、次いで2020年に米ウィスコンシン大学が発表し、かなり説得力のある仮説として注目されています。
根拠としては、それまで消化管と考えられていた薄色の帯に「脊索」の特徴が見てとれたことです。
脊索とはのちに「脊髄」になる神経を保護する器官で、脊椎動物の成長のごく初期に見られます。
他にも脊椎動物に似た脳、ヒレを支える構造、ヤツメウナギやヌタウナギと近い角質歯など、脊椎動物に見られる特徴がいくつも挙げられました。
この仮説を支持する研究報告は、当サイトでも2020年に取り上げています。
その一方で、タリーモンスターの化石に関する解釈を巡ってはいまだに論争が続いており、この説で決着が付いているわけではありませんでした。
そんな中、東京大学大学院の研究チームが新たに、脊椎動物説に反証する証拠を発見したのです。