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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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乳児期の記憶が残りにくい「脳のしくみ」の一端を解明 (2/2)

2026.07.09 12:00:54 Thursday

前ページ赤ちゃんの脳は「白紙」ではなく、むしろ「配線だらけ」だった

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つながりすぎた脳では、記憶が「ぼやける」

では、なぜそれほど多くのつながりがあるのに、乳児期の記憶は残りにくいのでしょうか。

鍵になるのは、記憶の「量」ではなく「精度」です。

今回の研究では、生後まもないマウスのCA3回路では、個々のシナプスの影響が非常に強いこともわかりました。

シナプスとは、神経細胞同士が情報をやり取りする接続部分です。

若いでは、たった1つの入力だけで次の神経細胞が発火してしまう場合がありました。

これは、回路がとても反応しやすい状態にあることを意味します。

一方、成長した脳では、1つの入力だけでは神経細胞は簡単に発火しません。

複数の入力が同時に集まって、はじめて次の神経細胞が反応するようになります。

この違いは、記憶の作られ方に大きな影響を与える可能性があります。

若い脳では、神経細胞が簡単に発火するため、さまざまな経験が広い範囲のネットワークを活性化しやすくなります。

しかしそのぶん、異なる出来事同士の活動パターンが重なりやすくなります。

たとえば、ある匂い、ある声、ある場所の感覚が、それぞれ別々の記憶として整理される前に、大きく重なった活動として処理されてしまうかもしれません。

すると脳は、「これは昨日の出来事」「これは別の場所での出来事」というように、記憶を細かく区別しにくくなります。

記憶はまったく作られていないわけではありません。

ただし、その記憶は大まかで、境界があいまいで、長期的に残るほど精密ではない可能性があります。

このことは、私たちが乳児期の出来事を思い出せない理由を考えるうえで重要です。

乳児期の脳は、何も感じていないわけでも、何も学んでいないわけでもありません。

むしろ多くの情報を受け取り、活発に反応しています。

しかし、その情報を大人のように細かく分け、安定した記憶として保存するための回路は、まだ発達の途中なのです。

成長とともに、脳は過剰な接続を刈り込みます。

そして、少ないけれども構造化されたネットワークを作ります。

その結果、神経細胞はむやみに反応するのではなく、必要な入力がそろったときだけ選択的に反応するようになります。

この変化によって、記憶はより区別しやすく、より安定した形で保存されるようになると考えられます。

つまり、乳児期の記憶が残りにくいのは、脳が働いていないからではありません。

脳があまりにも広く、強く、そしてまだ粗くつながっているために、記憶が細部まで固定されにくい可能性があるのです。

まとめ

今回の研究はマウスを対象としたものであり、人間の乳児期記憶を直接調べたものではありません。

そのため、この仕組みだけで人間の幼児期健忘を完全に説明できるわけではありません。

それでも、赤ちゃんの脳を「未完成だから記憶できない」と考えるのではなく、「過剰につながった回路を、成長の中で精密化している」と捉える視点は、記憶の発達を理解するうえで重要な手がかりになります。

私たちが乳児期の記憶を思い出せないのは、その時期の脳が空っぽだったからではないのです。

むしろ、脳は最初から多くの配線を持ち、世界を受け止める準備をしていました。

そしてその後、余分なつながりを削りながら、ぼやけた経験を、はっきりした記憶へと変えられる脳へ成長していくのです。

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