愚者の金「黄鉄鉱」の中に本物の金が高濃度で閉じ込められていた
愚者の金「黄鉄鉱」の中に本物の金が高濃度で閉じ込められていた / Credit:Canva
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愚者の金「黄鉄鉱」の中に本物の金が高濃度で閉じ込められていた (2/2)

2026.07.15 20:00:01 Wednesday

前ページ圧倒的な濃度の金

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日本の海に眠る「愚者の金」は本物の金を含んでいる

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Credit:Canva

ではなぜ、黄鉄鉱の内部の見えない金がこれまで見つかっていなかったのでしょうか。

理由はその存在のしかたにあります。

私たちがふだん目にする金──金塊やアクセサリー、あるいは砂金──は、金の原子が何兆個も集まって金属の塊になったものです。

原子がたくさん集まって金属のかたまりになることで、あの独特の金色の輝きが生まれます。いわば「群れているから目立つ」のが普通の金です。

ところが、この黄鉄鉱の中の金はまるで違いました。金が、黄鉄鉱の結晶の骨組みの中に、独立した粒をつくらないまま、広く分散しているとみられたのです。

たとえるなら、砂浜に落ちた金のネックレスなら誰でも見つけられますが、砂粒の中に、金が独立した粒をつくらず、素材の一部として細かく散らばっているような状態では、誰も気づけません。

集団にならないから金属としての輝きも出ない。肉眼ではもちろん、普通の顕微鏡でも見ることができません。

だからこの金は「見えない金(invisible gold)」と呼ばれています。

ここで素朴な疑問が浮かびます。

黄鉄鉱は鉄と硫黄の鉱物であり、大量の金が入る余地は本来あまりありません。

なぜ金が入り込めたのでしょうか?

従来から鍵と考えられてきたのは、ヒ素でした。

ヒ素が硫黄の位置に入り込むと、きれいに揃っていた結晶がゆがみ、小さなすき間ができます。すると、大きめの金が、このすき間に入り込みやすくなると考えられてきました。

いわばヒ素が「ドアを開けた」ことで、金が結晶の中に招き入れられる、というわけです。

ただこれまで研究者たちは「黄鉄鉱に溶け込める金の上限は、ヒ素の量でおおむね決まる」と考えていました。

ところが今回は、一部の黄鉄鉱が、これまで考えられていたその上限を超えていたのです。

研究チームがさらに調べると、桁違いの金を含む黄鉄鉱には、ヒ素だけでなく鉛や銅も多く含まれていました。

ヒ素だけがドアを開けていたのではなく、鉛や銅も「別のドア」を開く助けになっていた可能性があります。

つまりヒ素に加えて鉛や銅があることが、桁違いの金を説明する重要な手がかりになったとみられます。

もう一つ、研究チームは興味深い傾向を見つけています。

すべての黄鉄鉱が同じように大量の金を含んでいたわけではありませんでした。

金の量は、採れた場所や、黄鉄鉱がどのように「育ったか」によって大きく変わっていたのです。

高温の熱水と冷たい海水が激しく混ざる場所では、黄鉄鉱が急速にできあがります。

急いでできた結晶は並びが整いきらず、ヒ素や鉛、銅などの不純物を巻き込みやすい。

そのぶん金が入り込む余地も多く、実際に飛び抜けた金濃度を示していました。

反対に、比較的ゆっくりきれいに育った黄鉄鉱では、今回の分析点で、金もヒ素も少ない傾向がありました。

丁寧に積んだ壁は、異物を抱え込みにくい。急いで積んだ壁は、思わぬ宝まで巻き込みやすい。

黄鉄鉱の「育ち方」が金のありかを示す道しるべになりうるという発見は、世界中の海底鉱床で金を探すための新たな手がかりになるかもしれません。

長い間、黄鉄鉱は人を騙す鉱物の代名詞でした。

けれど今回の研究は、日本深海に眠る「愚者の金」に、世界でも最高級の濃さの本物の金が、原子のレベルで静かに溶け込んでいたとみられることを教えてくれました。

なお余談になりますが、研究者たちはこの鉱床の水深が比較的浅いことに着目しており、他のより深い鉱床に比べれば、将来の商業開発の難しさは小さい可能性があると述べています。

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