なぜ「認知シャッフル」をすると眠たくなるのか?
眠れない夜に頭に浮かぶのは、単なる雑念ではありません。
明日の予定を組み立てたり、過去の会話を反省したり、将来の問題への対策を考えたりと、一定の目的を持った思考であることが多いです。
こうした思考は、脳にとって「眠る前に、まだ処理すべき重要な問題が残っている状態」といえます。
認知シャッフルを考案したボードワン氏は、心配、計画、頭の中での予行演習などが続いていると、脳の入眠を調整する仕組みが覚醒状態を維持する可能性があると考えました。
言い換えるなら、脳が「今は眠っている場合ではない」と判断しているという考え方です。
そこで、認知シャッフルは、頭のなかへ脈絡のない映像を次々と送り込みます。
フクロウの次に船、船の次に風船、風船の次に富士山というように、互いに無関係なイメージを切り替えていくと、目的をもった思考を筋道立てて考え続けることが難しくなるのです。
さらに、バラバラの映像を思い浮かべることは、人が自然に眠りへ落ちるときの思考に似ている可能性があるといいます。
覚醒状態から睡眠へ移る境目では、まとまりのある思考が次第に崩れ、人物、場所、物、出来事などの断片的な映像が浮かぶことがあります。
ボードワン氏は、この一瞬だけ現れる夢のような映像を「マイクロドリーム」と表現しています。
つまり、バラバラな映像は、眠気によって起きる結果であるだけでなく、脳を入眠時に近い状態へ導く合図になるかもしれないのです。

この点で、認知シャッフルは羊を数える方法とも異なります。
単純に数字や羊を数えるだけでは、数えながら仕事や心配事を考えることができます。
一方、次々と違う物を探して映像化する作業には、ある程度の注意が必要です。
心配事を続けられない程度には頭を使いますが、難しい計算や物語ほど脳を刺激しないという、絶妙な位置を狙った方法なのです。
しかし、認知シャッフルを「誰でもすぐに眠れる方法」や「不眠症を治す方法」と断定することはできません。
効果には個人差があり、単語を考えることが負担になる人や、数字や羊を数えたりする方法のほうが落ち着く人もいます。
それでも、薬や特別な器具を使わず、布団の中ですぐ試せるという点は、この方法の大きな利点です。
眠れない夜には、「早く眠らなければ」と自分を追い詰めるほど、脳がますます覚醒してしまいます。
そんなときは、眠ろうと努力する代わりに、頭の中で意味のない映像をシャッフルしてみるのもよいかもしれません。
「ふね、ふくろう、ふうせん、ふろ」
次に何を考えるか分からなくなった頃には、すでに眠りの入り口へ足を踏み入れている可能性があります。
認知シャッフルの目的は、ゲームを最後まで続けることではありません。
途中でゲームそのものを忘れ、知らないうちに寝落ちすることこそが、この不思議な言葉遊びの唯一の勝利条件なのです。





























