ネコが居座る「体の部位」ごとの意味合い
ネコが飼い主の上で眠る行動には、匂いによるコミュニケーションも関係しています。
ネコの顔や頭、身体には、フェロモンを含む匂いを分泌する臭腺があります。
ネコが飼い主の足元に身体をこすりつけたり、額を押しつけるように頭突きをしたりするのも、自分の匂いを相手につける行動です。
人間にはほとんど分かりませんが、ネコは匂いを使って、仲間や縄張り、安全な場所を確認しています。
飼い主の上で長時間眠れば、ネコの身体の匂いが衣服や寝具、飼い主の身体に移ります。
その結果、飼い主はネコにとって「自分と同じ匂いがする安心できる仲間」になります。
これは単に所有物として印をつけているというよりも、自分の生活圏や仲間の集団に飼い主を組み込む行動と考えたほうがよいでしょう。
野外で暮らすネコも、親しい個体同士で身体をこすり合わせたり、毛づくろいをしたり、一緒に眠ったりします。
こうした行動によって、集団内で共通する匂いが作られ、仲間と外部の個体を区別しやすくなると考えられています。
人間と暮らすネコにとって、飼い主はこのネコ同士の関係を部分的に代行する存在なのかもしれません。
一緒に眠ることでネコは、「自分とこの人は同じ集団に属している」と繰り返し確認しているのです。
もちろん、ネコが飼い主に愛情を示している側面もあります。
ネコは単独行動を好む動物というイメージを持たれがちですが、親しい相手との社会的なつながりを持たないわけではありません。
ネコ同士でも、互いの身体をこすり合わせる行動や、相手の毛をなめる相互毛づくろい、一緒に寄り添って眠る行動が見られます。
飼い主と一緒に眠ることも、こうした社会的行動の延長線上にあると考えられます。

また、ネコによって飼い主のどこで眠るかが異なるのも興味深い点です。
胸の上を好むネコは、暖かさに加えて、呼吸や鼓動を心地よく感じているのかもしれません。
膝の上は、暖かいだけでなく、飼い主になでてもらいやすい場所です。
頭の近くで眠るネコについては、頭部から特別に多くの熱が出ているからとは限りません。
むしろ寝返りを打っても頭は胴体ほど大きく動かないため、ネコにとって安全で安定した場所になっている可能性があります。
さらに、飼い主の顔や目の近くにいることで、ネコが安心感を得ていることも考えられます。
ただし、飼い主の上で眠るすべてのネコが、まったく同じ理由で行動しているわけではありません。
単純に最も暖かい場所を選んでいるネコもいれば、飼い主との接触を強く求めているネコもいます。
ネコの性格や成育環境、ほかの猫の有無、飼い主との関係によって、それぞれの理由の比重は異なるでしょう。
ネコが飼い主の上で眠るのは、暖かさを得るためだけでも、愛情を示すためだけでもありません。
安全な場所で休みたいという生存本能と、親しい仲間と匂いや体温を共有したいという社会的な性質が組み合わさった行動です。
つまり、ネコが胸や膝の上で安心して目を閉じているとき、ネコは飼い主を「暖かい寝床」として利用すると同時に、「自分を守ってくれる信頼できる仲間」として受け入れていると考えられます。
ただし、ネコと一緒に眠ることが、すべての飼い主に適しているわけではありません。
眠りが浅い人はネコの動きによって睡眠を妨げられる可能性があります。
ネコの足についた猫砂や抜け毛がベッドに持ち込まれることもあるため、衛生面への配慮も必要です。
呼吸器に問題がある人や猫アレルギーのある人は、無理に同じ寝床で眠らないほうがよいでしょう。
それでもネコが自ら飼い主の上を選び、体を預けて眠っているなら、それは少なくとも、その場所を安全だと感じていることの表れです。
重くて動けなくなったとしても、その時間はネコから寄せられた、かなり大きな信頼の証しなのかもしれません。

































