なぜSNSは美容施術の依存リスクと結びつくのか?

なぜSNSは美容施術の依存リスクと結びつくのでしょうか?
研究者たちは論文の中で、SNSが次のような形で依存を後押しする可能性を挙げています。
1つ目は「SNSが自分の体への不満を、育てる」ということです。
不満は、放っておけば、ただの不満です。仕事や食事や眠気に紛れて、薄れていきます。ところがSNSを開くと、そこには終わりのない人の顔が流れています。しかも、流れてくる顔は全員、最良の一枚です。最良の角度、最良の光、最良の加工を通った顔。
そうすると不満は、薄れる機会を失います。
それどころか、比べる材料を毎日届けられることになってしまいます。
2つ目は「SNSが人から見られる不安を、育てる」ということです。
SNSには、いいねがあり、コメントがあり、数字がついています。
見られることが、常に測られることにつながってしまうのです。自分の見た目が、その日ごとに点数をつけられているような感覚が続けば、外見への意識は張りつめたまま解けなくなっていきます。
3つ目は「SNSが何を美しいと思うか。その基準そのものを、書き換えていく」ということです。
これは非常に厄介です。
1つ目と2つ目は不満や不安を育てる作用がありました。
しかし3つ目は、不満や不安をはかる“ものさし”そのもの――つまり何を美しいとするかの基準――が変わってしまうことを意味します。
美の基準が時代とともに変わることを、私たちはとっくに知っています。平安時代の美人と、いまの美人は違う。太眉が流行れば、太眉が美しく見えてくる。それは、知っていました。
ただ、それを書き換えているのは「時代」という、自分の手の届かない、どこか遠くの大きなものだと思っていました。
ですが研究チームの見立てが正しければ、美の基準は時代のような何十年単位で動くのではなく、SNSという流行り廃りが激しい世界で急速に動き回っているのかもしれません。
そしてSNSに近い人たちは、顔や体という動かしにくいものを持ったまま、動き回る美の基準にも振り回されることになります。
白雪姫でたとえるなら、「鏡よ鏡」と問いかけると世界で一番美しい人を答える、あの魔法の鏡が、数か月ごとに判定基準を変えてしまうようなものです。
もしそんな鏡が相手なら、悪いお妃様は白雪姫を憎むより遥か前に、精神的に参ってしまったでしょう。
もっとも、今回の研究により美容施術の依存の原因が全て解明されたわけではありません。
今回の研究は統計分析による関連性を調べたものであり、依存についての脳科学的・神経科学的な原因を確かめたわけではありません。
また調査が行われたのもイスラエルに住むユダヤ系の女性だけで、男性についてはデータがありません。
それでも今回の研究は、依存に対する私たちのみかたを変える切欠になるでしょう。
私たちは長いあいだ、依存の原因を物質か人間性か、そのどちらかに求めてきました。
しかし今回の研究は人と環境の「あいだ」に、依存の入り口がひそんでいる可能性を示しました。
もしあなたが、SNSを閉じたあとに、鏡に映る自分の顔に不満が増していたなら、あなたの美の基準が揺らぎはじめた瞬間なのかもしれません。






























