100年以上前に名付けられたバオバブが「新種」として復活
実はA. bozyという名前が初めて登場したのは1910年です。
植物学者のジョゼフ・ジュメル(Joseph Jumelle)とアンリ・ペリエ・ド・ラ・バティ(Henri Perrier de la Bâthie)が、1909年にマダガスカル北西部のサンビラノ川流域で採集された標本をもとに、この木を独立した種として記載しました。
しかしその後、A. bozyは独立種ではなくA. zaの変種と考えられるようになり、長い間「A. zaの一部」として扱われてきました。
今回の研究は、100年以上前に独立種として記載されたバオバブの位置づけを、現代のゲノム解析によって復活させた形になります。

A. bozyの主な生息地は、マダガスカル北西部にある比較的湿潤なサンビラノ川流域です。
ところがこの地域では、カカオ農園の造成や焼畑による稲作などのために森林伐採が進んでいます。
チームは、現在知られている分布範囲や個体群の規模、森林減少の状況を考えると、A. bozyはIUCNレッドリストの基準で「Endangered(絶滅危惧)」に相当すると考えています。
これは単にバオバブの種類が1つ増えたというだけの話ではありません。
以前は広範囲に分布するA. zaの一部だと思われていたため、北部の集団だけが限られた地域に生息し、脅威にさらされていることが見えにくくなっていました。
別種だとわかれば、その種がどこにどれだけ生息しているのかを個別に評価でき、保護の必要性もより正確に判断できるようになります。
さらに今回の解析では、別のバオバブ「A. rubrostipa」についても、現在1種とされているものが将来的に2種へ分けられる可能性が示されました。
ただし、こちらについてはまだサンプルが十分ではなく、追加調査が必要だとしています。
巨大で目立つバオバブなら、すでにすべて調べ尽くされているようにも思えます。
しかし今回の研究が示したのは、「そこに木があると知っていること」と「それが何者なのかを正しく理解すること」は別の問題だということです。
100年以上前から人々の目の前に立っていた木が、DNAを読み解くことで再び独立種として認識されることになりました。
そして正しい名前を与えることは、分類学だけでなく、その木を絶滅から守るための第一歩にもなるのです。
































